1972年の作。アメリカでのリリースは2月ってことだから(この時代は日本盤は遅れて出てたのでは?)、世に発表された時なんか、僕は小5の終り頃だな。
僕の家にはこのアルバムはなかったと思うけど、4 の Heart Of Gold のシングル・レコードがあった(邦題が「孤独の旅路」だった)。それはなんか中学に入ってた頃のように思う。この歌、かっこいいと思ったし、何だか 歌詞 にも惹かれた。
1970年リリースの AFTER THE GOLD RUSH は家でLPのジャケットを見た気がするけど(たぶん兄貴が友人から借りてきたもの)、家にあってよく聴いたアルバムは、C,S,N & Y の 4 Way Street ・・・ これは1971年のリリースみたいね。この時代、僕は何と言っても小学校半ばあるいは高学年から中学にかけてだもんね。前後関係が実感として残っているのではありません。で、実のところ、僕がこのロック史上に残る名作 HARVEST を手にして、本当にきちんと聴いたのは、発表からおおよそ30年後ね、もちろんCDです。
このアルバムって、今改めて聴いてみても、けっこう地味な曲調なんだ。淡々と静かに歌われる曲が多いです。だから、その年、1972年度のビルボード年間アルバム・チャートで1位になったほど「売れた」というのは何か時代の力みたいなものも感じます。上に記した Heart Of Gold が全米1位になったのはまぁ分かるけど(渋い曲だけどヒットしそうな曲だもんね)。
CRAZY HORSE と一時的に離れて制作。オーケストラが使われてる曲もある。ニール・ヤングはアコーステイック1本って感じで(…とハーモニカ)、百面相ニール・ヤングのアンプラグドな人格が残した名作ってとこかな。渋い、味わい深いアルバムです(ニールの兄貴、未だ若かったっていうのに)。何しろタイトルが HARVEST だもんな。
(2005年4月17日、記)
1991年リリース、NEIL YOUNG & CRAZY HORSE のライヴ・アルバム。ニール・ヤングの CRAZY HORSE を伴った1991年 1月22日から 4月27日のツアーからの2枚組ライヴ・テイク。ロックを爆裂させる暴走機関車的パフォーマンスの数々。1曲目の Hey Hey, My My ・・・から圧倒されます。
ディランの Blowin' In The Wind のカバーは、確か同年(1991年)1月17日の湾岸戦争(もちろん2003年のアメリカのイラク攻撃でなく1990年のイラクのクウェート侵攻の後のまるでTVゲームをやるようにアメリカがイラクに爆弾の雨を降らしたあの「湾岸戦争」)勃発を受け、ニール・ヤングが急遽ツアーで演る曲に加えたものとか。警戒警報のサイレンと爆撃の音、戦闘機が飛ぶ音、銃撃の音が鳴り響く中、この名曲のイントロがエレキ・ギターで奏でられる。かなりテンポを落として爆音を交え、しかしサビのコーラスはあくまで美しく。これ、名演だね。
2003年のGREENDALEツアー日本公演の時のアンコール後の轟音爆音ライヴ は大体こういう感じでした。ってことは、10年以上経っても、ニール・ヤングはある意味トシくってなかったってことか。 Rockin' In The Free World も演ってくれたけど、このCDのライヴ音源録音と同じ力強さでした。
NEIL YOUNG & CRAZY HORSE のロックの爆発、野獣ニール・ヤングの咆哮を聴きたければ、これです。
(2005年4月17日、記)
HARVEST から20年、1992年のリリース。前年1991に出されたライヴ・アルバム WELD と聴き比べると、おいおいこれが同じ人の音楽かって感じ。ニール・ヤングをよく知らない人は呆然かも。しかも時期も1年しか違わない、ニール・ヤングにとってはどうってことないことだけど。
ロックの歴史的価値としては HARVEST に軍配が上がるのかどうか分からないけれど、僕の好みではこっちが上。もっとも未だ20代だったニール・ヤングと、50に近づきつつあったニール・ヤング、当然、円熟味は後者の方があります。まさに HARVEST MOON (中秋の名月)、収穫の季節の名月をアルバム・タイトルにした作品らしい出来。美しいアルバムです。
20年前の HARVEST の収録曲からの続編的部分が実際に感じられるようだけど、その辺は日本盤のライナーに譲りましょう。バックの演奏陣も20年前とかなりダブってるらしい(バンド名も20年前と同じ STRAY GATORS がクレジットされてる!)。
1曲目の Unknown Legend から物語性を感じさせる音楽に惹き込まれます。メロディ、演奏、ヴォーカル、コーラス(コーラスにはリンダ・ロンシュタットが参加)、全てが美しい。ハーモニカがイントロを奏でる2曲目、From Hank To Hendrix にもすーっと自然な感じで繋がっていく(こっちにはリンダ・ロンシュタットの他にジェイムス・テイラーも加わってる)。リンダ・ロンシュタットはアルバム・タイトル曲、4曲目の Harvest Moon にも参加してます。この曲ももちろんグッド。文字通り成熟を感じさせ、心に沁み入る音と声。
最後の Natural Beauty は、これほどの美しい音楽はそうそうありませんって感じ、曲名そのまま。この曲の録音にはけっこうコダワリを見せていて、元々はオレゴン州はポートランドでのライヴを録音し、その後、カリフォルニアで追加録音したものらしい。10分強の長いパフォーマンスですが、とにかく美しい。そう、Natural Beauty の情景がそのまま浮かんできそうな音楽。ハーモニカもギターもヴォーカルもコーラスも、やはり、あくまでもみんな美しく、そして、言葉のままの意味でも比喩の上においても、Natural Beauty を失わないことの大事さを、ニール・ヤングが歌ってる。
カントリーやフォークの趣も取り込みつつ、静かに歌い上げつつ、円熟を謳い上げつつ、だけどあくまでロック。ジャンルのネーミングはどうでもよいのでありますが、しかし僕はこの「静かな」ニール・ヤングにやっぱりロックとロック・スピリットを感じるのであります。
(2005年4月17日、記)
2005年の発表。HARVEST と HARVEST MOON に続く三部作の最後を飾るなどと宣伝されていた。ヤング自身が気まぐれでそう思ったのか、レコード会社の宣伝コピーに過ぎないのか、何となく後者のような気もするが、ニール・ヤングのファン、リスナーの一人である僕には、さして気にならない。まぁ率直に言って、それら二作に連なる作品と受けとめるには何か無理がある気はするけどねぇ。・・・ ただ、このアルバムが優れた内容であることは間違いない。
ニール・ヤングは、知る人ぞ知る、いや、有名な話か(笑)、アメリカ人と思われがちだけど、実はカナダ生まれです。
とは言ってもザ・バンドとか、カナダからアメリカン・ミュージックの世界に入ってくる人は多分珍しくないんだろうけど。
ヤングはたしかトロント出身らしいけど、家族が揃っていた時代にしろ、あるいは両親が離婚してから母親に引き取られてのカナダでの生活にしろ、PRAIRIE は、そんな時代を想い起こす、ヤングの心の故郷みたいなものらしい。草原地帯、大草原ってとこですね。
つまり、PRAIRIE WIND は草原を吹く風って感じか。そんな雰囲気が出て、基本的に、アコースティックなサウンドでまとめたアルバムになってます。
このアルバム制作の前だったと思うけど、ニール・ヤングは、父親を亡くしている。
4 の Far From Home では、父親の膝の上に座り、父親がギターを弾き、歌い、叔父さんがピアノを弾き、従兄弟がコーラスをつけ、といった懐かしい家族の風景が歌われる。
6 のアルバム・タイトル曲では、Tryin' to remember what my daddy said, Prairie wind blowin' through my head と歌われています。
アルバムの最後を飾る When God Made Me は秀逸なゴスペル曲でありつつ、音楽的にはゴスペル・ミュージックを受け継ぎながら、しかし作って歌うのはニール・ヤング、ただシンプルに神を礼賛する曲にはなっていないですね。
この曲は、昨年、ニューオーリンズなどを襲ったハリケーン・カトリーナの被災地救援のためのライヴで、ヤングが歌ってた曲でした。
Was he thinking about my country or the color of my skin ? Was he thinking about my religion and the way I worshipped him ? ...... When God made me, When God made me ... と歌う曲。
神が僕を、神が我々を創ったとき、神は何を考えていたのだろう?
Did he envision all the wars that were fought in his name ?
Did he give me the gift of voice, so some could silence me ?
Did he give me the gift of vision, not knowin' what I might see ?
Did he give me the gift of compassion, to help my fellow man ?
When God made me ... When God made me ...
カントリー、フォーク、ロックをナチュラルな音で奏で、歌い繋ぐアルバム。スピリットはロックです。
ギター中心のアコースティック・ナンバーで続け、
最後に、ニール・ヤングがピアノ弾き語りで、When God Made Me を歌って締め括る。
最後の曲を含め、コーラスも素晴らしい曲ばかり。
(2006年7月17日、記)
2006年の発表。日本では 6月下旬で、アメリカではそれよりしばらく前の発売だったと思うけど、ニール・ヤング自身のウェブ・サイトでは、更にその前から、無料でこれらの曲を流してた。
1曲目から9曲目まで、アップ・テンポなヤングのロックです。
マイケル・ムーアの『華氏911』のラストで流れる Rockin' In The Free World みたいな雰囲気を想像すれば(雰囲気です、ロッキン・フリーワールドほどの爆音系ではありません)、大体当たってます。その調子でぐいぐい進みますね。しかも聖歌隊の合唱付き。2 の アルバム・タイトル曲もその勢いです。
Don't need no more lies 、いいかげんにしてくれ、もう嘘なんかたくさんだ、と叫ぶ 3 も迫力。
The restless consumer flies around the world each day, With such an appetite for efficiency and pace .....
7 の Let's Impeach The President は、タイトルそのまんま。
大統領を弾劾しようってわけです。それも、ブッシュの演説からサンプリングして曲に取り込んでる。
ずっとハイ・テンポなロックが続き、9 の Roger And Out で若干だけテンポを落とし、そして、最後は、2001年9月11日アメリカ同時多発テロの後の追悼ライブ で、たしかウィリー・ネルソンが歌っていた America The Beautiful 、これで締め括り。
がんがんアジって、最後にこれを持ってくるところにも、ヤングのメッセージを聴き取らなくてはならないだろうと思う。
「私は、18才から22才ぐらいの若いシンガーがこういった曲を作り、立ち上がるのを待っていた。 本当に長いこと待っていた。しかしやがて、60年代に青春を過ごした世代が、まだまだこうしたことをやっていかねばならないのだと思い始めた。私たちはまだ現役なのだからね」
ヤングは、こう言ってるそうです。トシくったって言いたいことはある。演りたい曲、奏でたい音楽は、まるで湧き出てくるようだ。ほんと、素晴らしい。
こういうオッサンを、僕はリスペクトします。見習わなくちゃ。
(2006年7月17日、記)