01年 9月23日〜10月 2日

最近の子供はどうか分らないけど、今の大人の多くはガキの頃に日記を何日か書いた経験があるのでは?
斯く言う私もその一人、当然この日記も不定期です。 (2001年8月19日、記)

01年 9月23日(日)   アメリカ同時多発テロ、その後の雑感

 ブッシュのアメリカは、これは「戦争」だと言っている。自分は国際法に詳しいわけでは全くないが、市民に対する無差別攻撃は、戦時下においても決して許されるものではないだろう。国際法上もそうなのだろうと思うが、万一どこかに明記されていなくても、軍事力というものを国際紛争の解決手段として未だに保持し続ける近代国家の、少なくとも暗黙のルールでもあるだろう。その意味で、南京虐殺を始めとする、先の世界大戦での日本軍の数々の蛮行と共に、アメリカ軍の東京大空襲、広島・長崎への原爆投下は、最大級の無差別殺戮と言っていいと思う(ナチスのホロコーストは言わずもがな・・・但しあれが戦時下の行為としての範疇に入るのかは疑問だが)。

 今回のアメリカ同時多発テロを「戦争」の行為とするなら、宣戦布告なき先制攻撃という点では(しかしテロは全てそうだ)、「パール・ハーバー」に共通点を見出すことも出来るだろう(但し後者についてはアメリカは実は事前に察知していたという説もあるが、日本側に奇襲の意図があったのは確かである)。

 結局、あのテロは、テロであるがゆえに奇襲であり、なおかつ市民を狙った無差別テロでもあったということで、その規模に関わらず史上最大級の蛮行であったと言っていいのだろう。その残忍さで言えば、近年なら、他でもない日本で起きた、オウムのサリン事件が同列に並べられるものではないかと思う。
 ただし、我々が忘れてはならないのは、市民に対する無差別な殺戮ならば、アメリカや日本もその近現代史において加害者の側に立ったことがあるということだ。そして、それが過去のことだと言うなら、パレスチナでは、近年も、そして現在も、市民(民衆と言っても人民といってもいいが)が殺されつづけているということだ。無差別テロがどんな理由でも正当化出来ない行為であり、徹底的に排除せねばならない行為であるのは当然だが、そのようなテロを生み出す土壌がどこにあるのかを考え、根源的な原因について正確な認識を持つことは意味のあることであり、それどころか絶対的に必要なことであるはずだと思う。自爆テロをするのは極く一部の人間だが、自爆テロはしない、もしくは自爆テロに反対する一方で、しかし今回のアメリカ同時多発テロを全否定はしない、中には快哉を叫ぶ人間が、中東もしくはイスラム世界にいることは軽視出来ない事実だ。あんな残虐な行為を全否定出来ないのは誤っている、ということは多くの人間が言えることだ。だが、そんな絶望的な憎悪の感情が彼らにあるのは何故なのか、その理由を理解しようとし、そこから真の平和を作り出す方策を実行しなければ、結局は、この問題は解決の方向に向かわない。それなしにただ軍事的な報復を行なうのでは、結果は憎しみの新たな連鎖を生み、憎悪の感情を増幅させるだけだろう。

 アフガニスタンへの攻撃は、テロリストにもタリバーンにも属さない多くの民衆を殺戮することになるだろう。また、アメリカの言う容疑者がおそらく首謀者だろうと想像はするが、しかし、アメリカに協力を約束するどの国もが、アメリカに「証拠」の提示を求めないのは極めて象徴的だ。多くの国が既に報復ありきの思考回路に入っている。
 新聞報道によれば、地雷除去の運動でノーベル平和賞を受賞したジョディ・ウィリアムズは、18日に、対人地雷全面禁止条約の締結国会議が開かれているニカラグアで、「(同時多発テロで)アメリカ市民が殺されたからといって他の国民を殺してもいいという考えは、テロリストと同じ水準だ」と発言した。アメリカ国内でも、軍事報復に反対するデモが行なわれ始めた。アメリカの世論調査会社ギャラップが17日から19日の 3日間に世界31ヶ国で行なった調査の結果によれば、アメリカの武力行使の積極支持はイスラエルで77%、アメリカで54%、しかしヨーロッパや南米では 8割から 9割が慎重派であり、容疑者の身柄引き渡しと裁判を優先すべきとの考え方が大勢を占めたとのことである。

 日本では、例えば社民党のおたかさんが、「ことが起きたからと言って、慌しく物事を決める(「変える」だったかな?)のは、いかがなものか」と発言したそうだ。しかし、これはこれで、はいそうですか、とは言えない。じゃぁ、この人達は、「ことが起き」ていない時に何か考えていたのか? はっきり言って何も考えていない。「ことが起き」ていない時に何か言い出せば大騒ぎになるが、しかしこの人達もそれだけで、特に平時に何か考えているわけではない。いつまでも無条件で平和が続くものと決めつけているかのようだ。というか、日本全体がそうなんだ。経済以外の全てを、アメリカを中心とする世界に委ねてきた為に、「ことが起きた」場合の用意など何も出来ていない。ギャラップが上述した調査でその調査対象に日本を入れなかったのは、偶然ではないだろう。斯く言う自分も日本人・・・。もちろん他人事のようには語れないのだけれど。


01年 9月23日(日)   アメリカ同時多発テロ、犠牲者追悼チャリティ番組を見て

 アメリカ同時多発テロの犠牲者への追悼と(遺族や被災者と被災地復興のための)寄付を目的に、アメリカの ABC、CBS、NBC、FOX の 4大テレビネットワークが共同で制作した番組が、日本時間では昨日の朝10時から 2時間余にわたって生中継された。私は生では最後の一部以外見逃してしまい、日本時間の夜放送された再放送を録画して観たのだが、以下に簡単に感想を記しておきたい。
 ミュージシャンではブルース・スプリングスティーン、スティービー・ワンダー、U2、トム・ペティ、ニール・ヤング、ビリー・ジョエル、ボン・ジョヴィ、シェリル・クロウ、スティング、ポール・サイモン、などなど・・・。俳優ではトム・ハンクス、トム・クルーズ、ジャック・ニコルスン、アンディ・ガルシア、アル・パチーノ、ウーピー・ゴールドバーグ、キャメロン・ディアス、ジュリア・ロバーツ、ロバート・デ・ニーロ、などなど・・・。これだけの短期のうちに 4大ネットが協力し、しかもあれだけ多くの大物スターを集めたのは驚きだ。アメリカが惨劇の犠牲者を追悼し、今も救援活動を続ける人々と共にありたいという一つの意思にまとまっている証であり、協力するスターの側にも確かな志しがあってのことだろう。途中、モスレムの学校での子供たちのインタヴューがあり、「元のノーマルな世界、一緒に笑いながら過ごせる平和な世界に戻ってほしい」という少女の声などが紹介され、モスレムである元ボクシング・世界ヘビー級チャンピオンのムハマド・アリのスピーチもあったのは、良い企画だったと思う。

 まともなリハの余裕など無かったはずにも関わらず、ミュージシャンのパフォーマンスはことごとく見事なもので、「妙に」センチメンタルに過ぎる表情も見せず、完璧な演奏をしてみせたのは反って感動的だった。印象に残るパフォーマンスばかりだったが、とりわけスティービー・ワンダーの LOVE'S IN NEED OF LOVE TODAY と、ポール・サイモンの BRIDGE OVER TROUBLED WATER は、もともとの楽曲の素晴らしさと共に、これらの歌の詩の意味を知りながら、そのパフォーマンスがあの悲劇の被災者と復興のために捧げられたことを考えれば、心を大きく動かさずにはいられない。

 ここでもう一つ特筆しておきたいのは、ニール・ヤングの IMAGINE だ。言わずと知れた、20年前に凶弾に倒れたジョン・レノンの作。今、少なくともブッシュ政権下で報復の武力行使に向かって戦意高揚ムードが高まりつつある中で、同時多発テロの後、一時は放送で流すことが控えられた代表的な曲である IMAGINE をニール・ヤングが敢えて、明らかに「敢えて」選曲したことには、彼の明白なメッセージがある。 IMAGINE のメッセージ を知らずに彼が選曲したことなど、有り得ないことだ。

 最後にやや蛇足とも思えるが、その他に感じたことのうちの一点だけを記したい。ワイクレフ・ジーンという(私は知らない)ミュージシャンが、ボブ・マーレイの REDEMPTION SONG を演ったのだが、そのパフォーマンスはかなり良かったにも関わらず、このミュージシャンに星条旗を身にまとったかに見えるジャケットを着て歌われてしまったこの曲は、ここでは何か場違いな印象が残った。本来ボブ・マーレイは全ての人民の解放のために作ったかもしれない(?) REDEMPTION SONG だが、この曲が星条旗にまとわれて、最後には「アメリカ、アメリカ」と叫びつつ歌われてしまうと、いや、 REDEMPTION SONG は、アメリカを中心とする世界から見放され続けているパレスチナの民のためにこそ歌われるべきだと言いたくなってしまう・・・。歌を奪い合うなんて悲しいことだけど。


01年 9月24日(月)   ギャラップの調査について

 昨日付、「犠牲者追悼チャリティ番組を見て」の上の「アメリカ同時多発テロ、その後の雑感 」でギャラップの調査結果を取り上げた。昨日の朝日の朝刊の報道から引用したものだが、今日の NHK の夜 7時のニュースで、やはりギャラップの調査について報道しており、内容が若干異なっているので、念の為記録しておきたい。
 それによれば、調査は、14日から17日にかけてギャラップ・インターナショナルが、世界35ヶ国で各国500人から1,000人規模を対象に行なったもの。犯人がいると思われる国を武力攻撃することに賛成したものが過半数を超えた国はアメリカ、イスラエル、インドの 3ヶ国。その他の32ヶ国では、まずは犯人もしくは容疑者を国外に退去させ、裁判にかけることを優先すべきと答えたものが過半数を超えたとのことである。なお、この NHK の報道でも、この35ヶ国には日本は含まれていないとしている。
 新たな武力行使が憎しみの連鎖や増幅を結果し、新たなテロの土壌となる懸念は否定出来ない。というか、その可能性は大きいのではないか。テロの土壌となる憎しみを解消していく努力が必要不可欠であり、これがなければこの問題は解決の方向に向かわないことは明らかだが、しかし、同時にテロとの力での対決姿勢を示さないわけにはいかない段階に来ているのも確かだろう。何といっても、生物化学兵器の類によるテロの可能性が現実の問題になってきてしまっている今日では・・・。ただし、それでも、憎しみの原因を解消していくような解決策なしでは、問題が永久に解決しないことは間違いない。


01年 9月24日(月)   アフガン報道

 この数日間で急に、アフガンの現状についての報道が多く見られるようになってきた。テレビでは、映像を交えて、民衆の生活の実態やタリバーンの統治について詳しく報道し始めている。
 内戦やとりわけ干ばつによって飢餓の問題が深刻になっており、テロ後の緊迫した状況の為に国際的な援助も受けにくくなって、医療も満足に受けられない。主としてイラン側に多くの難民が流出している。こんな状況の国に武力行使が行なわれていいのか・・・。
 一方で、タリバーン政権下では公開処刑が行なわれたり、女性の就職が禁止されたり、女性が外出する時は顔を含めてほとんど全身を隠さなければならず、しかも必ず男性を伴わなければならない、学校にも行ってはいけない、といった極端な政策が実施されている。タリバーンが反論の為に取材陣に紹介した女学校では、一番最初に教える言葉が「ジハード(聖戦)」だった。部族や宗派の違いも差別・抑圧の理由になってしまっている。オサマ・ビン・ラディンをかくまっているということ以前に、こんな前近代的抑圧を行なっている政権をこのままにしていいのか・・・。
 報道はさまざまなことを考えさせる。こんなに問題だらけのアフガンが、これまで大して報道されなかったのは何故だろう? 世界はアフガニスタンという国にほとんど注目して来なかった。今回のアメリカ同時多発テロ、その後の、アメリカや同盟国によるアフガニスタンへの武力行使の問題によって、ここまで世界から注視され、詳しく報道されるようになったのは何とも皮肉だ。アフガニスタンの深刻な状況は、近年どころか、ずっと以前から続いていることなのだろうから。


01年 9月24日(月)   祝!ローズ55号

 テロの問題関連ばかり書き続けている時期に何だけど・・・。まぁ、もちろんそればかり考えているのでは全くないのである。

 本日の西武戦で、近鉄のタフィー・ローズが、西武の松坂から、日本プロ野球タイ記録となるホームラン55号を放った。久しぶりのホームラン、それも目が覚めるような右翼線への弾丸ライナー。ローズらしいバック・スクリーンへのホームランではなかったが、これで勢いづくことを期待したい。試合は中村の逆転サヨナラ・ホームランで劇的勝利。ホームランは今日で二人合わせて100本、めでたしめでたし! マジックが1となったが、最後まで大丈夫なんだろうなぁ、近鉄は・・・。


01年 9月25日(火)   アフガン難民(24日付日記一部修正)

 24日付日記(「アフガン報道」)に「主としてイラン側に多くの難民が」なんて書いたけど、この表現はおそらく誤り。もちろんパキスタン側にも大勢の難民が流出しており(とりわけ国境の町ペシャワール)、たぶん歴史的にも長く、人口としてもこっちの方が大きい。ただし現在は両国とも国境警備を厳しく若しくは国境封鎖しており、難民としていずれかに逃れるのは困難になっているのではないかと思う。
 私が18年前に旅したパキスタンには既にアフガン難民が存在したし、結局(当時の)ソ連の侵攻以来、20年以上にわたって、アフガンの歴史は戦争と内戦と難民の歴史でもある。それも大国や諸外国の思惑に揺さぶられながら・・・。


01年 9月26日(水)   近鉄、ゆーしょーーー!!! あまりに劇的な優勝!

 近鉄が優勝した。あまりに劇的な優勝だ!
 マジック1での対オリックス戦。1対0から1対4まで行った後、2対4、しかし9回表に2対5になった時には万事休すと思われた。それでも梨田近鉄は3点差に離されてからでも普段は抑えの切り札の大塚を投入する執念を見せて9回裏につなぎ、満塁で代打北川が劇的な、あまりに劇的な逆転サヨナラ満塁ホームラン! こんなドラマチックな優勝決定シーンが過去にあっただろうかというくらいの幕切れ。いやぁ、とにかく我が家は親子3人大騒ぎとなった。
 思えば一昨日にマジック1となった試合だって、同じ9回裏に北川のソロ・ホームランが無かったら、その後の中村のツーランホームランも「サヨナラ」にはならなかった。「今日ホームラン打てば自分で終われてヒーローになれるぞー!」なんて叫びながら観ていたが、まさか本当にホームランになるとは、応援してる方も驚きのビックリ・ホームラン・・・。阪神時代からホームランはゼロ、ヒットは19本、打率も1割台という人だったらしいが、ここに来ての北川の活躍は素晴らしいの一語に尽きます。まさに開花!という感じ。

 祝!近鉄優勝。とにかく今日はめでたし、めでたし!!


01年 9月30日(日)   日本球界の「ガイジン」主義を断固批判する!

 TBS が毎週日曜朝に放映している番組「サンデーモーニング」に、司会の関口がその週のスポーツ界の出来事を紹介し、大沢親分や張さんに「アッパレ〜!」とか「喝!」とかやってもらうコーナーがある。
 今週は近鉄優勝やローズの日本球界タイ記録となる55号ホームランなどがあった週だが、話題は長さん(長嶋巨人監督)引退で持ち切り。前者は完全に脇役となった。9月28日の引退発表は当日のナイト・ゲームのヤクルト勝利前に行なわれたものであり、その時点で(数字上はヤクルトがもはや圧倒的に有利とは言え)巨人の優勝の可能性は極小もしくはゼロに近いというほどでもなかった。例えば優勝の可能性が文字通り無くなった中日の星野監督の辞任とは違い、未だ可能性を残しているこの時期に「辞める」ことを発表することは、普通だったら批判されても不思議ではない。長嶋の日本のプロ野球に対する功績は分かるが、このことについて、マスコミのどこからも批判の一かけらも出て来ないのは、日本球界の「菊のタブー」ならぬ「長のタブー」というヤツかもしれない。しかし、実はここで言いたいのはそのことではない。

 前述のコーナーに戻ろう。さんざん長嶋礼賛をやった後(いつもは長嶋采配に批判的な張さんも今日は称賛ばかり)、ようやく 9月24日(月)のローズ55号に話題が移った。・・・しかし、たったの一言二言で終りだった。
曰く、
関口 「どうですか、アッパレですか?」(ただし、やらんでもいいでしょうと言わんばかりの口振り)
大沢親分 「まぁ未だタイ記録だからな。」(張さんも、確か横で頷いたか同じ発言だったか…)
関口 「しかし、あの王さんの記録が破られるかもしれないのは寂しいですねぇ。」

 この後、大沢親分の「そうだなぁ。・・・ま、記録は破られるためにあるとも言えるからな。」という発言があり、途中で親分か張さんの「タイではなくて破ればアッパレだけど」という趣旨の発言もあったような無かったような・・・。しかし、要するにそれだけだ。

 これが日本人選手だったらどうだったか? これは疑問の余地無いですよ、あの「偉大な王選手」の記録に並んだんです、若手だろうがベテラン選手だろうが、間違いなく「アッパレ〜!」だ。おまけに 少なくとも 2、3分はタイ記録までの歩みを特集してくれるだろう。

 何故ローズだとこんな扱いになるのか? それは未だ日本球界は外国人選手を「ガイジン部隊」の「傭兵」扱いしているからだ。彼らを日本人選手と対等のアスリートとして認めていないからだ。本音を言えば、ホームランや打率のランキングも「ガイジン」は別扱いにしたいんじゃないか。
 ローズは既に日本の野球で 6年間プレイしているが、確かに外国人選手の中には、ほんの一時の出稼ぎのつもりで日本でプレイしている選手も少なくないだろうし、彼らを迎える球団側も、もともと彼らをいわゆる「助っ人」としてしか見ていない場合が多いだろう。しかし、それにしてもだ、「出稼ぎ」だろうが何だろうが、彼らが日本でプレイしているのは紛れも無く「野球」(いや BASEBALL だと言う人がいるかもしれないがその議論はこの文脈とは別問題、彼らが日本の「野球」のルールの中でプレイしていることは否定出来ない)であり、多くの日本人選手同様に自分の為チームの為に全力を尽くしていることに変わりは無い(ちょっと成績が落ちればクビになりかねない彼らはある意味でより厳しい条件の中でプレイしている)。日本人選手だろうがメジャーから来た選手だろうがマイナーから来た選手だろうが、あるいは韓国から来ようがドミニカから来ようが、素晴らしい記録は分け隔てなく評価すべきだ。依然として日本で最もメジャーなプロ・スポーツである「プロ野球」だが、この辺については、日本のスポーツ界で最も遅れている中の一つと言えるかもしれない。

 ところで、張さんはもちろん「チョーさん」でなく「ハリさん」、通名「張本勲」、本名「張勲」(韓国名、チャン・フン)だ。日本の生涯打率最高記録保持者は今も「ハリさん」、王貞治が愛称「ワンちゃん」でもともと台湾人であることは多くの人の知るところだろう。ローズ達を、経緯も背景も全く違う「ガイジン」だとして差別することは、もういい加減にやめてほしい(「ハリさん」や「ワンちゃん」には別の種類の、しかし広義では同様の日本社会の差別があったはずだが、ここでは触れない)。あのバースに最後の 2試合(巨人戦)で全打席「敬遠」、最終試合などは 1球もストライクを投げなかった「日本球界」(と敢えて言う)、確かにあの時よりはマトモになったけど、プレイだけで評価するようになるのはいつのことだろう。

 それにしてもローズ、ちょっとプレッシャー有りか!? ファンとしては何とか56号打ってほしいんだけどなぁ…。
 なお、ウルトラ巨人主義者の徳光の過去の問題発言については、こちら。
 それと、上記の「アッパレ」コーナーでは、近鉄優勝の方は、秒殺で終った「ローズ55号タイ記録」に続き、「代打逆転サヨナラ満塁優勝ホームラン」の一言とその瞬間歓喜する近鉄選手のわずか数秒の映像による、こちらも秒殺に終わりました。アリガトさんよ、関口さん!

 本日は息子の小学校の運動会。足はお世辞にも速いとは言えない息子だが、たまたま「白組」になった同じクラスの男子が少なく、その中で一緒に走ってみて期せずしてリレーの選手になってしまったそうだ。練習の時は 1位でバトンを渡されても自分の番で 2人に抜かれ、今日の徒競走も 5人中 4位。しかし、最終種目のリレーでは(徒競走も頑張って 1人抜いたんだけど)、親がこれまでに見たことないような必死の形相で 1位を守り切った。本人はバトン渡す直前に抜かれたんじゃないかと言っていて、親には抜かれなかったように見えたので正確には分からないんだけど、抜かれたとしても、見るからに一所懸命やったことは、親から子供に対しては称賛してやりたい。
 最後は見事に親バカ発言ですが、自戒を込めて言うと、とにかく子供だろうが大人だろうが得手だろうが不得手だろうが、日本人だろうが外国人だろうが、ベストを尽くせば評価されるべきです。そしてまた、立派な記録を出せば、正当に評価されるべきなのです(最後はちょっと強引な結び、笑)。


01年 9月30日(日)   日本の恥、世界の恥、勝負をしない王・若菜ダイエー!

 今日の福岡ドームのダイエー−近鉄戦。息子の小学校の運動会見物から帰宅した私は、ローズの打席は最終打席しか見れなかった。ボールばかり連発されたローズが、見逃せば四球になる外角クソ・ボールを、明らかに抗議の強振で空振り、最後はやはり高めの明らかなボール球を打って内野ゴロだった。捕手を立たせての露骨な「敬遠」ではなく、勝負を避けているわけではないと見せたいのだとしたらお笑いだ、最初から四球でイイというだけの投球じゃないかと怒ったのだが・・・。しかし事実はもっとひどく、最低最悪のものだった。上の日記で、バースの全打席「敬遠」時代よりはマトモになった、なんて書いたが、撤回する。少なくとも、王という人は何も変わっていない。

 夜の NHK の「サンデースポーツ」で知ったよ。試合前の王とローズの対面、王がローズに自分のサイン・ボールをプレゼントし、励ましているかのようなシーンは、最早空しい。今日のローズは実は全打席事実上の「敬遠」だった。Yahoo! Sports のプロ野球速報で配球を調べたが、最初の 2打席は連続四球、第 1打席がストレートの四球で、第 2打席はスリーボールの後の明らかなボール球二つを無理矢理のファールと空振りの後に最後はやむを得ず見送って四球・・・。結局ローズの哀しい抵抗により、4打席 2打数 0安打 2四球に終った。

 「サンデースポーツ」によると、王の談話は「ローズの攻め方は選手に任せている。」だったが、一方で若菜コーチは「ローズはいずれアメリカに帰る選手。王監督の前で記録を破らせたくなかった。」と発言し、事実上ローズとの勝負を避けたことを認めたそうだ。若菜よ、よくも正直に言ってくれた。王監督の「任せている」発言もウソだろう、ウソでなくとも、あんなつまらん連続「敬遠」を黙認した以上、実際には彼もそれを望んだことは明らかだ。「世界の王」が笑わせるぜ。

 それにしても驚くべきは若菜の発言だ。「いずれアメリカに帰る選手」が日本の記録を作ってはいけないのか!? 記録を作ってはいけないのに、アンタ達は彼らに日本に来てチームに貢献しろと言うのか!? コトは若菜だけの問題ではない、残念ながら・・・。日本球界にはこんなクソッタレな体質が今も残っている。外国人選手の問題だけでなく、日本人選手同士だって、近年でも、首位打者争いや、ホームラン王争い、盗塁王争いなどでの同類の醜い例には事欠かないのが、日本球界の悲しい現実だ。

 やはり「サンデースポーツ」によれば、ローズは試合後「ボールばかりでイライラした。」と言ったそうだが、彼にとって、試合前に王からもらったサイン・ボールはどんな意味を持つだろう? そもそも持っている気になるのか? 持っていれば、日本での悲しくも悔しい思い出の記念品にでもなるのだろう。メジャーで堂々と勝負されて、記録を打ち立てるイチローが、いやそんなメジャーが、AMERICAN BASEBALL が眩しいよ。あっちでは、少なくとも試合展開に無関係な、記録つぶしの「敬遠」のような恥さらしな行為はしないんだそうだ。それがスポーツだよねぇ、たぶん。じゃぁ日本のって何?
 最後に一言。俺は日本のプロ野球の組織論って詳しくないけど(でも想像はつくねぇ)、あんな恥さらしな指示って、ダイエーのバッテリーも何とか拒絶出来ないんだろうか? 誰か城島に訊いてくんないかなぁ。


01年10月 1日(月)   日本の恥、世界の恥、勝負をしない王・若菜ダイエー!(その2)

 今朝の朝刊からの情報を得て、続編を一筆。

 昨日のダイエーとの最終戦で、近鉄のローズが受けた投球は 4打席で18球、うちストライクは 2球のみ(これもギリギリ、投げてる方はボール判定になってもイイと思って投げてるようなもんだ)。
 ピッチャーの田之上は、試合前に勝負を避けるよう指示され、「むちゃくちゃ嫌な気持ち」だったそうだ。指示したのは若菜バッテリーコーチで、その場に王監督はいなかったとのこと。しかし、ここに王の意思が働かなかったなんて誰が思う? 万が一そうでなかったとして、素人が見ても明らかな、試合展開を無視する「敬遠」の連続を制止させる権限を持っている王監督が何もしなかったのだ。彼の意思がどこにあったのかは、疑問の余地のないところだろう。
 昨夜の NHK の報道では、若菜の試合後の発言は「ローズはいずれアメリカに帰る選手。王監督の前で記録を破らせたくなかった。」(一字一句まで正確に聞き取ったわけではない)だったが、今日の朝日の朝刊では、「彼はいずれアメリカへ帰るんだ。おれたちが配慮してやらないと」。いずれにしても、球界を永久追放してもいいような、これ以下はないような恥さらしな発言。「配慮」って何? 王監督だよねぇ。まさか、ローズが56号打って日本球界を永久追放されたらかわいそうだからってわけじゃないよなぁ。
 指示した場にいなかった王も卑劣だなぁ。あなたが背後で指示したか、じゃなかったとしても、試合前にどんな指示がバッテリーにされるのか、想像できないこともなかっただろうよ。あなたは少なくとも手を打てたはずだ。しかし実際にやったことは、ご丁寧にローズと対面し、サインボールをあげるというマヤカシの行為だけだった。
 その前の近鉄 3連戦で、ダイエーのバッテリーがローズに真っ向勝負をしかけた時は(ローズにボコボコにホームランを打たれた)、王が勝負させたなんて美談めいた話も出たが、俺は事実は違うと思うよ。あの時は優勝争いの真っ最中だった。優勝がかかった試合で、後ろに中村(と磯部)が控える中でローズを歩かせるわけにもいかなかったんだよ。それだけのことさ。
 既に近鉄の優勝は決定している。マジックではなく、完全に決定している。昨日は優勝のかからぬ、優勝チーム決定後の試合だった。その中での、試合の成行きを無視した「敬遠」だった。王も若菜もダイエー・バッテリーも、どこからも弁解も釈明も出来ない、汚い行為だったわけだ。あなた達のやったことは、十分過ぎるほどにダーティなことだよ。

 ついでに言えば(王・若菜ダイエーの汚い行為と比べるようなものでは全く無いが)、昨日の近鉄はローズに多くのチャンスを与えようと彼を 1番打者に起用したのだが、これは優勝を決めたチームのご愛嬌かもしれないが、そんなに褒められたことでもないかもしれない。ただし、プロ・スポーツが(その素晴らしいプレイによって)客やファンに快楽を与えることを第一義とするなら、優勝決定後の昨日の試合において(近鉄ファンはもちろん)野球ファンが最も関心を持ち注目した点が何だったかを考えれば、あれもプロの一つのアイディアと言えるのかもしれない。一方で、ダイエー側のローズ連続「敬遠」で喜ぶのは、一部の偏狭なダイエーファン(真のダイエーファンなら認めがたいよな、こういう人達)か、偏狭な王崇拝者もしくはウルトラ巨人主義者(にとっては王は今もあくまで「巨人の王」だ)、じゃなかったら、未だにはびこる日本球界の排外主義者達だ。普通の、ほとんどの野球ファンは、あんなものを見る為に金払って球場に足を運んだりはしまい。テレビ観戦にしても同じこと、あんなもの観て楽しい人はどうかしてるよ。
 まぁローズの 1番起用も、王・若菜ダイエーの何らかの汚い作戦を予測しての(皮肉を込めた)対策だったとすると、卑劣な王・若菜コンビの方が一枚上手だったな。何回打席に立っても「敬遠」作戦一本槍だったんだろうから。

 唯一の、かすかな救いは、ローズの同僚の中村の発言。
「お客さんに失礼や。ああいうことするから、日本の野球はダメだ。」と言ったそうだ。こんな惨状の日本球界では、彼が日本の野球を見限ってメジャーに挑戦する可能性はますます強まったんじゃないか。
 最後にローズの言葉。
「記録を残したいのならそれでいい。」 もちろん「そうまでして」記録を残したいのなら、という皮肉を込めた、哀しいコメントだ。ああ・・・。

 もう一言だけ記したい。日本にスポーツ・ジャーナリズムというものがあるのなら、こういう時にきちんとモノを言ったらどうなんだ。ベタ記事でお茶を濁すのはやめてほしいよ。


01年10月 1日(月)   日本の恥、世界の恥、勝負をしない王・若菜ダイエー!(その3)

 日刊スポーツのホームページの記事から、昨日の王・若菜ダイエーの恥さらしの行為に関してのコメントを拾い、当サイトの、ロックを探す管理人がきっちりと解説、もしくは通訳する。

ダイエー首脳陣の一人 「55本の記録は日本プロ野球の象徴として取っておくべきだ。」
当サイト管理人による通訳 : 「いやぁ、うちの小久保とか、近鉄でも中村くんとかなら良かったんだけどな。ガイジンには渡せないよ。」

川島コミッショナーが今日出した談話 「フェアプレーを至上の価値とする野球の本質からまったく外れている。ファンの前で堂々と胸を張れる試合をすることを強く望む。」
これは通訳要らないな。当り前のハナシです。なんでも異例の談話らしい。

次は上のコミッショナー談話が出されたことについての、王監督のコメント。
王 「こちらは何も言えない。選手には(四球を)強制できないし、打たれなさいとも言えない。心理は分かるが、勝負のあやだ。」
当サイト管理人による通訳 : 「改めてそんな建前を言われても、こちらは何も言えないよ。大体あからさまには強制していないんだよ。取材したでしょ、バッテリーに直接指示したのはコーチの若菜なんだ。え? 勝負しろとも言えないよ。真っ向勝負したらきっと打たれちゃうんだから、勝負しろってのは、打たれなさいってことでしょ。それじゃぁ僕の大事な記録が破られちゃうんだから、そんなこと言うわけないでしょ。僕の心理を理解してよ。勝負しないのも勝負のあやなんだって! 日本じゃ当然でしょ。」

最後にダイエー首脳陣のコメントをもう一つ(上記の「首脳陣」氏と同一人物かは不明)。
ダイエー首脳陣の一人 「むこうも同じ立場だったら、同じことをすると思う。うちから打とうとするのが間違い。」
当サイト管理人による通訳 : 「こんなの日本球界の常識だよ。日本国のプロ野球チームなら、同じ立場ならどこでも同じことするね。うちの監督は王さんなんだから、うちから打って新記録を樹立しようってのが、そもそもの間違いなんだ。」

 日本球界恥さらし、ここに極まれリ。これ以上、何か特に評論する必要は無いようだ。 


01年10月 2日(火)   日本の恥、世界の恥、勝負をしない王・若菜ダイエー!(番外編)

 今朝の朝日の朝刊に、3面にわたって、勝負をしない王・若菜ダイエーの関連記事が出た。少しは評価したいが、スポーツ欄の記事の作り方はいただけない。
 この 6試合で12四球のメジャーのボンズ(メジャー記録70本まで昨日時点であと 1本)を横に並べ、日米ともに、という印象を与える大見出しをつけているが、記事をよく読んでいくと、メジャーでは「チームぐるみということは絶対にない。打たれたくないという投手の気持ちが、そういう結果を生んでいるのだと思う。優勝の行方も決まっていないし」という、現地でボンズをマークする同紙記者からの報告が出てくる。実際、ボンズはこの間にもホームランを量産しており、彼の驚異的な実力とともに、基本的には「勝負」が成立していることがわかる。日本の場合は、優勝決定後に、「チームぐるみ」(組織ぐるみ! よく聞くよねぇ)で、投球前から計画された「敬遠」なのである。

 「菊とバット」の著者、ロバート・ホワイティングは「王監督は(勝負しろと)言えたはずだ。日本野球に新たな汚点を残す最終的な責任は王さんにある。」との談話を寄せ、朝日の編集委員は「(勝負しろ、それがスポーツだ、と)投手に、そう告げることができるのは、王貞治だけだったはずだ。」(この人は'85年のバースの時もそう思った、としている)と記し、別の記者も「王監督のダイエーは(バース相手の時の王監督の巨人と)同じ過ちを繰り返した。」と書いた。当然のコメントだ。一方、ロッテとヤクルトの、山本、若松両監督はダイエーを批判しているが(当り前!)、広島の山本監督が「人間なんやから」とダイエーに理解を示しているのは笑止千万。

 川島コミッショナーの「(そうまでして)守られた記録は、その記録ばかりか記録を達成した選手の人格をも汚すことになる」との言葉も、今回のダイエーの監督が記録保持者の王であれば、納得のコメントだ。王は「(投手の)田之上も最高勝率がかかっていた。」と言ったそうだが、ならば尚のこと、ローズ一人だけ(!)に対する、試合展開に関係ない「敬遠」攻め(本当は「逃げ」)は、ますますオカシイ。こんなものは、ルール違反でなくとも、スポーツという「快楽」に反しているのである。