03年12月21日〜12月22日

最近の子供はどうか分らないけど、今の大人の多くはガキの頃に日記を何日か書いた経験があるのでは?
斯く言う私もその一人、当然この日記も不定期です。 (2001年8月19日、記)

日記ページの背景変更 ( 031004 )

03年12月21日(日)   ブッシュ曰く 「大量破壊兵器の存在と将来の可能性は同義である」(爆笑、嘆息

 本日の1本目。

 ブッシュ米世界帝国大統領が12月16日、米ABCテレビとの会見で、イラク開戦の理由となった大量破壊兵器がまだ見つかっていないことを指摘されて、こう言った。

 ブッシュ曰く
「(イラクが実際に大量破壊兵器を持っていたか、単に可能性だけだったかは)どんな違いがあると言うんだい?  もしサダム(フセイン元大統領)が大量破壊兵器を手に入れようとしていたなら、つまり彼は危険だったということだ」


 びっくりだね。ABCホームページからの日本語に翻訳しての孫引きですが、この色で書いたところは、12月19日の朝日の朝刊の「国際」面、「地球24時」と題され「ことば・ワールド」との副題が付けられた欄からの引用です。当日の当該「地球24時」欄の中の上に引用した部分の右側には、イスラエル(ヨルダン川西岸・パレスチナ占領地の)分離壁建設に来年は 175億円投入との記事が掲載されていて、アメリカとイスラエル両国の指導者の誇大妄想ぶりが象徴される記事のコンビネーションになってます。偶然ですかね。僕は新聞は中立客観なんて有り得ない幻想的な「姿勢」を取るフリをするよりも、明確な理念と哲学を持った編集方針でいいと思いますから、この二つの記事の並びは偶然でなくていいと思いますがね。

 日本国のソーリも以前、「フセインが見つからないからフセインが居なかったなんて言えますか」なんて、小学生でも笑っちゃう答弁を国会で堂々と(嘆息)やってましたから、オツム(オムツじゃなくて頭)の出来はアメリカのブッシュより日本国のコイズミの方がもっと悪いんだろうね。ま、バカ比べに意味ないし、同じバカでも世界に与える悪影響の大きさはブッシュくんの圧勝。
 日本国ソーリ大臣コイズミの頭脳について、言うまでもないことを一つ言っとけば、大量破壊兵器はアメリカの攻撃前の当時イラクにあるかどうか判らなかったから国連も査察してたわけだけど、独裁者フセインが当時イラクに居たのは誰でも知ってたよね、うちの小5の息子だってもちのロンロン知ってたよ。全然違う話をごっちゃにしてるわけだけど、認識してないんならモノホンのバカだけど、承知してのハナシなら、国民が超バカにされたってわけね。ま、うちの11歳の息子はいつもコイズミがあんまりバカなのを笑ってるよ。小5にしてソーリ大臣を笑うしかないなんて、この国はタイヘンなもんだよ。

 さて、話は冒頭のブッシュの暴言に戻りますが、あんまりヒドイんで、ABCテレビのホームページをチェックしてみました。その部分、下に引用します。
 ABCテレビのサイト上では、 PRESIDENT BUSH のところも、ABC側 Interviewer の DIANE SAWYER と同じ色なんですが、以下では分かりやすくするためと、彼がレッド・カード退場すべき指導者だと思う僕として、この色に変えて引用しておきます(上の日本語訳に当たるところも この色 にしてます)。その他にも、一部、僕が特に注目すべきとした部分には、引用者の僕が 下線 を引いたり(下の下線はリンクじゃなくて「強調」意図の下線ってことです)、太字 にしたりしました。他は一切手を加えていません。つまり、内容はそのまんま、この件のやり取りの部分をそのまま、一文字残らず、以下に引用しています。

WMD Intelligence

DIANE SAWYER: Fifty percent of the American people have said that they think the administration exaggerated the evidence going into the war with Iraq, weapons of mass destruction, connection to terrorism.
Are the American people wrong? Misguided?

PRESIDENT BUSH: The intelligence I operated one was good sound intelligence, the same intelligence that my predecessor operated on. The ― there is no doubt that Saddam Hussein was a threat. The ― otherwise the United Nations might ― wouldn't a passed, you know, resolution after resolution after resolution, demanding that he disarm. ... I first went to the United Nations, September the 12th, 2002, and said you've given this man resolution after resolution after resolution. He's ignoring them. You step up and see that he honor those resolutions. Otherwise you become a feckless debating society. ... And so for the sake of peace and for the sake of freedom of the Iraqi people, for the sake of security of the country, and for the sake of the credibility of institu ― in ― international institutions, a group of us moved, and the world is better for it.

DIANE SAWYER: But let me try to ask ― this could be a long question. ... ... When you take a look back, Vice President Cheney said there is no doubt, Saddam Hussein has weapons of mass destruction, not programs, not intent. There is no doubt he has weapons of mass destruction. Secretary Powell said 100 to 500 tons of chemical weapons and now the inspectors say that there's no evidence of these weapons existing right now. The yellow cake in Niger, in Niger. George Tenet has said that shouldn't have been in your speech. Secretary Powell talked about mobile labs. Again, the intelligence ― the inspectors have said they can't confirm this, they can't corroborate.

PRESIDENT BUSH: Yet.

DIANE SAWYER: ― an active ―

PRESIDENT BUSH: Yet.

DIANE SAWYER: Is it yet?

PRESIDENT BUSH: But what David Kay did discover was they had a weapons program, and had that, that ― let me finish for a second. Now it's more extensive than, than missiles. Had that knowledge been examined by the United Nations or had David Kay's report been placed in front of the United Nations, he, he, Saddam Hussein, would have been in material breach of 1441, which meant it was a causis belli. And look, there is no doubt that Saddam Hussein was a dangerous person, and there's no doubt we had a body of evidence proving that, and there is no doubt that the president must act, after 9/11, to make America a more secure country.

DIANE SAWYER: Again, I'm just trying to ask, these are supporters, people who believed in the war who have asked the question.

PRESIDENT BUSH: Well, you can keep asking the question and my answer's gonna be the same. Saddam was a danger and the world is better off cause we got rid of him.

DIANE SAWYER:   But stated as a hard fact, that there were weapons of mass destruction as opposed to the possibility that he could move to acquire those weapons still ―

PRESIDENT BUSH:   So what's the difference?

DIANE SAWYER: Well ―

PRESIDENT BUSH:   The possibility that he could acquire weapons. If he were to acquire weapons, he would be the danger.  That's, that's what I'm trying to explain to you. A gathering threat, after 9/11, is a threat that needed to be de ― dealt with, and it was done after 12 long years of the world saying the man's a danger. And so we got rid of him and there's no doubt the world is a safer, freer place as a result of Saddam being gone.

DIANE SAWYER: But, but, again, some, some of the critics have said this combined with the failure to establish proof of, of elaborate terrorism contacts, has indicated that there's just not precision, at best, and misleading, at worst.

PRESIDENT BUSH: Yeah. Look ― what ― what we based our evidence on was a very sound National Intelligence Estimate. ...

DIANE SAWYER: Nothing should have been more precise?

PRESIDENT BUSH: What ― I, I ― I made my decision based upon enough intelligence to tell me that this country was threatened with Saddam Hussein in power.

DIANE SAWYER: What would it take to convince you he didn't have weapons of mass destruction?

PRESIDENT BUSH: Saddam Hussein was a threat and the fact that he is gone means America is a safer country.

DIANE SAWYER: And if he doesn't have weapons of mass destruction [inaudible] ―

PRESIDENT BUSH: Diane, you can keep asking the question. I'm telling you ― I made the right decision for America

DIANE SAWYER: But ―

PRESIDENT BUSH: ― because Saddam Hussein used weapons of mass destruction, invaded Kuwait. ... But the fact that he is not there is, means America's a more secure country.

2004 Election
・・・ここから来年の大統領選の話題へ。


 この DIANE SAWYER って人はABCテレビの Primetime というニュース番組のキャスターのようで、このインタヴュー記事が掲載されてるサイトの冒頭には、

Dec. 16― Following are extended excerpts from an interview President Bush gave to Primetime's Diane Sawyer on Dec. 16. It was the president's first one-on-one interview since the capture of deposed Iraqi President Saddam Hussein on Dec. 13.

とあって(サダム・フセイン身柄拘束後初めてのブッシュ独占インタヴューってわけです)、
サイト上に掲載されたインタヴュー記録は、まずはキャスターが

Was this the best day of your presidency?

とジャブを入れ、
ブッシュが

No. The best day of my presidency was when I was sworn in as President and ― because it gave me a chance to assume this high office and implement a strategy that would make the world more peaceful and more free and a country more compassionate. That's so far been the best day of my presidency.
This has been a presidency with a lot of dramatic moments, however, and, of course, the 13th of December was a very dramatic moment. September the 11th, 2001, was a dramatic moment. It's been a presidency that has been an active presidency for the sake of peace and freedom, and, therefore, there's been ― there are a lot of interesting stories to talk about.

と答えて、始まります。「こういうこと」言ってるヤツが「ああいうこと」やっていて、そいつが世界唯一のスーパーパワー(超大国)の指導者、大統領なんですよ。た、たまりませんよね。

 この後、記事が全部で3頁に分かれて掲載されていて、中に、
Hearing the News
‘Ultimate Penalty’
Weapons of Mass Destruction
Osama Bin Laden
U.S. Losses in Iraq
More Troops?
The Power of Prayer
WMD Intelligence
2004 Election
Following the News
The Economy
Gay Marriage
 といった小見出しが付いています。

 記事全体のタイトルは ‘Ultimate Penalty’
ブッシュの言葉のなかにある he ought to receive the ultimate penalty (もちろん he とはサダム・フセイン) から取っているようです。

 上に引用したのは(ABCさん、一部です、ご勘弁!) WMD Intelligence の部分です。この日記の冒頭で紹介した、朝日新聞に和訳されて掲載された箇所が含まれているところですね。

 内容は「読んで件(クダン)のごとし」なんですが、ブッシュが言ってるバカな内容以外の面で興味を持ったのは、というか感心したのは、インタヴュアーの鋭さと粘り強い追及ですね。ブッシュは結局、「何度訊かれても答えは同じだ。サダムは危険な男だったが、我々が彼を始末したおかげで、世界はマシになったんだ。」と言い、最後には、「何度訊いてもいいよ。私はこう言うだけだ。  ― 私はアメリカのために正しい決断をしたんだってね。」、さらい食い下がられると、「なぜって、サダム・フセインは大量破壊兵器を使ったことがあるし、クウェイトを侵略したし、・・・ だけど彼がもうあそこに居ないってことは、アメリカの安全保障が増したってことを意味するんだ。」と言って、この「大量破壊兵器の情報(諜報)」という話題を終わらせます。最後のは、直訳すれば「アメリカはより安全な、安心できる国になってる。」ってことでしょうが、ブッシュが言いたいことは、僕が意訳したような感じでしょう。

 アメリカは確かに間違ったことをしています。世論も信頼できません。一般のアメリカ人は、おそらく善良な人が少なくないのですが、同時におそらく、アメリカ以外のことや異なる文化、歴史についてあまりに無知です。マスコミを中心にして、ジャーナリズムも保守化しています。FOXはもちろんですが、たぶんABCも含めて。CNNだってそうです。

 しかし、それでも、上に引用したやり取りを見てみてください。読んでみて下さい。正直言って、率直に言って、僕は感心しました。日本のキャスターに、こんな迫力がありますか?

 田原聡一郎は「迫力」はまぁまぁあるんだけど、大声の恫喝(ドウカツ)が主たる「迫力」の源泉ですね。大勢の人の議論の司会はもうむちゃくちゃな独裁者でダメ、1対1だとマシになるんだけど、それでも一方的決め付けとかが多い。で、大声出して、強引に自分の持ってきたい方向に進める。上に引用したキャスター、少なくとも大声で恫喝するタイプとは思えません。
 久米宏をキャスターと言っていいかどうかわかりませんが、彼の批判精神というか、批判したい気分みたいなものは、僕は評価しています。しかし、迫力はありません。ニュース・ステーションの後任の古館(フルタチってこんな漢字だったかな)氏は期待してません。たぶん、ですが、ダメだと思います。機関銃のように喋ったとしても、論理の強さは期待できない。トーク・ショー的なもの、あるいはインタヴュー的な企画なら尚のこと、CNNのラリー・キングには遠く及ばないでしょう。
 筑紫哲也は迫力ないですね、全く。鋭さもありません。
 木村太郎、でしたっけ? 元NHKで今フジ・テレビの人、あの人は論外。話になりません。まぁそういう意味では、筑紫の方が木村よりマシなんだけど、筑紫さんはあまりに迫力なくて、なんか、現実を斬ろうって気構えみたいなものを感じないんです。要するに attitude の迫力を感じない。

 トム・ペティ曰く
「ロックは attitude が大事なんだ。」

 ・・・ へへ、まぁこれはロック・スピリットの話。しかし僕はですね、一応も二応も「ロックな日常を求めて」ってお題のサイトの主宰者なもんですから(笑)。


03年12月21日(日)   (日本の!)社民党的「ゴケン」と後藤田「翁」の見識、ケロッグ不戦条約から国連憲章

 本日の2本目。
 今朝のテレ朝のサンプロで、(日本の!)社民党の新党首、福島瑞穂さんに田原聡一郎が迫ってた(交際迫ってたわけじゃないよ)。

 ダメだね、やっぱ。福島さんさ、田原に「これまで何が足りなかったか」って訊かれて、「平和と護憲を大事だって思ってる人は確実にたくさんいるんだけど、雇用や不況の問題とか、日常の生活の問題に応えてこなかった。」んだって。

 全然わかっちゃいないな。
 いやね、あなたたちに経済政策を期待してる人はあんまりいないと思うんだけど、平和と護憲を真剣に考えてた人の一部には、一時、あなたたちの前身の日本社会党を支援もしくは支持してたときがあったと思うんですよ。でもね、マジに考える人は、あなたたち「護憲」じゃなくて「ゴケン」の人たちには嫌気がさしてくるんですよ。どうやって現実を崇高な理念に近づけていくのか、その具体的なアイディアをあなたたちから聞いたことがないんです。むかーし、日本社会党の石橋って人の非武装中立論てのがあったんだけど、ムゲに否定はしないけど、やっぱり現実には否応なく日米安保体制というものが存在して、米軍基地が日本国内にあって、そっから米兵がベトナム戦争に派兵されてもいたんです。それをどうやって変えていくか、眼の前にある現実をどうやって動かしていくかっていう説得力ある対案はありませんでした。他にはほとんど記憶にない。未来を語る理念自体は本当は大事なことなのに、それに向かっていく具体策を持たないまま、ついにはいつの間にか「自衛隊」「違憲合法論」なんてワケの分からんこと言い出して理念を後退させるだけの結末に陥ってしまいましたよね。今もそれは変わりません。

 上に引用した福島発言にあるような現状認識、自己認識じゃ、どうにもなりません。「日常の生活の問題に応えてこなかった」のが党勢後退、衰退の原因ではなくて、その前に言ってる、「平和と護憲を大事だって思ってる人」のなかの物事をマトモに論理とリアリズムで考える人たちに見捨てられたんです。あんなこと言ってるようじゃ、これからもダメでしょう。第一、「平和」は「日常の生活の問題」じゃないんですか。本当は「日常の生活の問題」でしょ。それがなくなったら「日常の生活」はどうなりますか。そういうリアリズムで問題を考えたことなんかないでしょう。だから、「ゴケン、ゴケン」と咳き込んだり呪文唱えたりすることはできるけど、例えばパレスチナの民のこと、口(クチ)だけでは何か言えても、本当に我が事のように(もちろん完璧は無理です、他人なんですから、できるだけってことです)捉えて「平和」の問題とかテロリズムが拡がる背景なんかを想像することなんか遠い遠いハナシでしょ。何しろ、自分たち日本人にとっても、「平和」は「日常の生活の問題」と別だと思って頭デッカチになって考えてるだけなんだから、遠い世界のことなんか真剣に考えるはずがない。


 ところで、昨晩のNHKの日本の安全保障を考えるって企画の番組で、前半部分に、中曽根「元」ソーリ、栗山「元」外務事務次官・「元」駐米大使・「現」外務省顧問(もう顔からして貧相なじいさん)、大江の健さん(あ、健三郎か)と共に、「元」副総理の後藤田正晴「翁」が出てました。この4人がコメンテーターになって、NHKの迫力ない司会者が進めてたんだけど、4人のなかで、最も心動かされたのは後藤田さんですね。

 後藤田「翁」は、こんな趣旨のこと言ってました。
 イラク占領当事者である米英以外の主たる大国が一国も出てない状態をどうして「国際協調」と呼べるのか。
 栗山「現」外務省アホ顧問が、「いや、しかし、この秋の国連決議はイラク復興支援への国際的な協力を求めているのは確かでして・・・」とか言うと、
 後藤田「翁」曰く
「日本の自衛隊派遣はイラク特措法を根拠としていて、それはあなたが言う国連決議の前の話でしょ。その前に国連の許容しない米英のイラク攻撃を日本政府が支持して、そこからイラク特措法、自衛隊派遣とつながってるんであって、そもそも件の国連決議の求める国際協調実現が不透明ななかで出て行くのは国際協調じゃなくて占領体制への支援ということですよ。」

 「改憲」について訊かれると、
 後藤田「翁」曰く
「日本の今の憲法には、1928年のケロッグの不戦条約から国連憲章に連なる理念が引き継がれてる。これは真剣に受けとめなくちゃならない。」

 1928年のケロッグの不戦条約。改めて調べました。 戦争の違法性を確定した最初の国際法で、国家の政策遂行の手段、国権の発動たる戦争を放棄し、国際紛争を平和的に解決することが規定されたものです。1927年、フランスのブリアン外相は、米仏間の戦争違法化条約を提案したのですが、これを受けたアメリカ国務長官ケロッグが、これを多国間条約とすることを逆提案、1928年に日本を含む15の原加盟国によって調印されました。後に加盟国数は60ヶ国にまでなり、条約は現在でも有効とされますが、多くの国が自衛戦争の権利について留保し、なおかつ違法行為に対する罰則規定がないため、今に至るまで実際的な効果を発揮していないものですね。
 英語名称は Treaty for the Renunciation of War, General Treaty for Renunciation of War as an Instrument of National Policy 、日本語の正式名称は「戦争放棄に関する条約(戦争ノ抛棄ニ関スル条約)」で、通称的には「ケロッグ-ブリアン条約」(Kellogg-Briand Pact)、「パリ規約」とか言ってるようです。
 しかし、たしかにその後の歴史が示す通り、加盟国の日本も諸外国を侵略し続けたし、世界は第二次世界大戦に突入します。そして、日本は 1945年 8月15日に敗戦を迎えます。

 国連憲章は、正式には国際連合憲章です。国際機構に関する「連合国」会議の最終日、1945年 6月26日にサンフランシスコにおいて調印され、1945年10月24日に発効したものですね。
 第二次世界大戦の戦勝国である「連合国」が国際連合を構成することになったのは冷厳な歴史的事実ですが、その前文にはこう書かれています。


 われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、
 基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、
 正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、
 一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、並びに、
 このために、
 寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互いに平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、
 共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、
 すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、
 これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。
 よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、
 全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、
 この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。

 (ウェブで検索して和訳を探しました。長々とした文になってるのはご勘弁!)(左の下線はリンクじゃなくて「強調」意図した下線ね。)


 もう一度書きましょう。国際連合の主たる創設者は、第二次世界大戦の戦勝国である「連合国」です。1945年 6月に調印され、1945年10月に発効した国連憲章の前文に上記のような理念が書かれていながら、その2年後の 1947年11月には、その国連が(当時はアジア・アフリカの旧植民地の多くが独立していなくて国際政治の勢力図は欧米中心だったわけですが)強引なパレスチナ分割決議を行ない、それが 1,000年を優に超える長きにわたって当地ではパレスチナ・アラブ人(パレスチナ人)が多数者もしくは支配層だったことという歴史と、当時のシオニズムによる加速度的ユダヤ人移住を経てなおユダヤ人人口がパレスチナ人人口の半分にも満たなかったという当時の人口構成と土地所有率(ユダヤ人約7%)の現実を無視したものであったことを考えれば(パレスチナ全土の6割弱の土地をユダヤ人国家、つまり直後に建国宣言したイスラエルに与えるとの分割決議)、国連の姿は当初から理念通りではなかったし、初期のうちから大きな問題を抱えていました。しかし、一国の憲法とは違います。一国の憲法ですら容易に理念を「空論」だとして捨てるわけにはいかないのに、いわんや国連憲章をや、です。国際社会の平和と公正を希求する理念は、いつも非現実的だなどと論難すべきものでなく、それどころか、常に念頭に置いてよいものではないかと思います。
 とにもかくにも、上に引用したのが、後藤田「翁」が件の番組で触れた「国連憲章」、その前文の内容です。

 というわけで、これらが、後藤田「翁」のいう「ケロッグの不戦条約」から「国連憲章」への流れの fact の側面と理念の一面です。

 後藤田「翁」は、「改憲」について、さらに以下のような趣旨のことを言いました。
 「改憲」を未来永劫的に否定するものではない。特に憲法9条2項は論議の対象の一つとなるだろう。(注 : ちなみに2項は1項の目的を達するための戦力保持と国の交戦権の否定否認、前項である1項は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使を国際紛争解決の手段としては永久に放棄する、そう書かれたものですね。)

 後藤田「翁」談に戻ると・・・(以下に続けます。)

 しかし、今、自民党が「改憲」の案を 2005年までに作るとしている。まぁ案というのなら、それもいいだろう。しかし、実際の改定作業は急ぐべきでないと考える。
 自分は、2010年ぐらいになると、EUや中国などを含め、国際社会の新しい姿が見え始めるだろうと想っている。実際の改定作業の検討はそれから考えてよいことではないか。

 これは一つの見識です。一人の元政治家による、傾聴に値する見識の一つに違いないと思います。

 後藤田「翁」は、日米関係についても言及しています。こんな話をしました。
 日米同盟というのは、まぎれもなく「軍事同盟」である。日米安保条約は、今すぐには無理であっても、将来の国際社会のなかで、「友好条約」(「友好平和条約」と言ったかな?)的なものに質を転換した方がよい。

 最後に、今後の日本にとって大事なことは何だと考えるか、そう司会者に問われ、後藤田「翁」は、大略次のように述べました。
 平和の国であることが大事である。
 自主の国であることが大事である。これは何もナショナリズムを言っているのではない。しかし、対米一辺倒はやめるべきだ。
 共生の国であることが大事である。これは国内にも国外にも言える。近頃は「強者の論理」が偏重されているのではないか。国際社会において「国力」の弱い国に対しても、また国内の社会においては社会的「弱者」とされがちな人々とも、共に生きていこうとする姿勢が大事だ。


 どうですか?
 僕は自分を政治的リベラルだと思うし、社会民主主義的(「日本の社民党」とはぜーんぜん関係ない!)な考えにも共感するところがある。少なくともコンサヴァではない。当然、自民党に投票したことなど、一度もない。

 しかし、そのうえで想うんだけど、上に紹介した元自民党の国会議員、元副総理である後藤田「翁」の見識と理念と哲学、「ゴケン」呪文主義者なんかよりずっと崇高で、それでいてリアルじゃありませんか。いや、「哲学」とまで言ってしまうと、短い時間の後藤田「翁」のお話だけで、「翁」の「哲学」の深さ浅さまでは実際には分からないし、場合によっては、その程度の時間の話を聴いただけで「翁」の「哲学」について理解したつもりになっては失礼とも言えるのかもしれない。それは、まぁ分かりません。
 いずれにしても、「ゴケン」咳き込み主義者ではダメなんです。理念と哲学を持ちつつ、リアリストでも在ること。それが日本国と日本人に求められることかもしれません。求められるって、どこから? 誰から?
 国際社会から。・・・ 国際社会なんて、実際には日本なんかに何も求めていない?
 では、これでどうですか? 日本の子供たちに、僕たち私たち日本の大人達は、それを求められています。暗黙のうちに。僕は今は未だ小学生の子供がいるから、けっこうこれはリアルに考えるね。
 ・・・ たぶん、将来の世代からも求められている。そういうふうに考えるのが、「哲学」を持つことにもつながるのかもしれません。転石転倒男も思考はするのです。転がるということは停止していないということでもあります。ちょっと強引かい? まぁとにかく、思考停止はしたくない。なるべくなら。休むときはあっても、停止に気づかない、そんなふうにはならないようにしよう


03年12月21日(日)   フランスの公教育とムスリム女性のスカーフ

 本日の3本目。

 標題の件、ちょっと注目してます。
 今月17日、フランスのシラク大統領は、ムスリムの女生徒による学校内でのスカーフ着用(イスラムの教えによるもの)を禁じるための法律制定を求める考えを明らかにしました。

 フランスにはアラブ系移民を中心にかなりのムスリムが居住しているのですが、2年前のアメリカ同時多発テロ以来、イスラム教そのものでなく「イスラム原理主義」への警戒感が強まり、教室でもスカーフを着用する女生徒を巡る問題が発展し、公教育やその他の公共機関におけるこうした行為を「信教の自由」とみなすべきかという議論が行なわれていたのですが、大統領として、法的措置という強硬な手段で問題解決を図ろうとする姿勢を示したことになります。
 大統領は「学校では政教分離が必要で、そのための法も必要」と明言した、その明言の内容は朝日の記事からそのままの引用ですが、どうでしょう。こういうのやはり「政教分離」って言ってるんでしょうか。「公教分離」って造語した方がいいような気もするけど、「公教育」の「公教」と読まれちゃったら「私学奨励」(笑)になって誤解生むか(言葉は難しいっす)。「公宗分離」とでも言いますか(笑)。

 大統領は「控えめな宗教的印は認められるが、スカーフや大きな十字架など、これ見よがしのものは許されない」と述べ、来年 9月の新学期までに法を制定するよう政府に求めたそうです。併せて公務員の公の場におけるスカーフ着用禁止も要請しているようです。

 一方で、イスラム教徒への差別に対する憂慮も表明し、差別の有無等を監視する施設を設けることも提案しているとのこと。まぁ「施設」って新聞に書かれているのは、具体的にどんなものなのかちょっとイメージしにくいですが。

 昨日の「天声人語」(って改めて読むと随分と傲慢だなぁ、笑)にはこの問題が取り上げられていて、国内の極右の人間にも支持を拡げようとする政治的意図もささやかれるなど、穏やかでないようだが、スカーフをイスラム圏の女性抑圧の象徴とみる人々などを始め、法制定支持者は意外と多いようだ。
 ムスリムは抗議しているし、「何を着ようと自由」という宗教を超えた反対論も出てるらしい。

 キッパと呼ばれるユダヤ教の帽子やクリスチャンによる「大きな十字架」も禁止の対象になるとのこと。どこからが「大きな」なのかは難しいだろうが、まぁ服の中に入るような小さなペンダントの類は「これ見よがし」ではないってことかな。

 抗議運動にはイスラム教だけでなくユダヤ教、キリスト教からの合流の動きもあるようで、件の「天声人語」は、異教徒の「連帯を促そうという「深謀遠慮」だったらいいのだが。」とお茶を濁して終わっているが、何か重要なものが足りない。

 「天声人語」氏は、このことはもともと「文化の多様性」を受容してきたフランス社会で論争の的になっていると言うし、また、カソリックの教会「権力」と闘って「政教分離」を獲得してきた欧州の国家の歴史にも触れている。しかし、僕はリパブリカン、共和主義のことも考えた方がいいような気がしている。

 哲学の国なんだ。
 この問題の解決方法の是非論はともかく、仮に政治的打算みたいなものが裏にあるとしても、それが主たる要素とはあんまり想わない(もちろん、それが有り得ないとは決して言わないけど)。
 原理原則(いわゆる「原理主義」ってヤツのことじゃない)、理念、哲学、こういうのは(日本の状況的には悲しいかな)日本国よりはずっと(ずーっと!)大事にする国だと思うんだ。
 フランスは共和国だ。正式国名はフランス共和国、英語だと French Republic 、フランス語は何じゃい?(笑)    とにかく、共和制、共和主義の国です。現在の統治機構は 1958年10月の新憲法交付以来の「第5」共和制、つまり、長らく(ずっと以前から!)、共和制です。一応も二応も、その哲学もしくは理念、原理原則が関係してない、とは想えないんだな。何たって、とっくの昔、1966年 7月には NATOの軍事機構から脱退したりもしてるくらい(こっちはちょっとここの文脈では脱線トピックかな、ま、蛇足です、笑)。

 まぁ他の大国同様、間違いもよくするわけだけど・・・。
 戦前ではイギリスとのパレスチナ、シリアの分割、戦前から戦後の対ベトナム(インドシナ休戦協定、ジュネーブ協定調印は 1954年 7月)、対アルジェリア(同国の独立戦争は 1954年11月開始、戦争終結は 1962年 3月)、1956年10月スエズ動乱での英仏軍によるエジプト爆撃などなど。1960年 2月には、サハラ砂漠で初の核実験、つまり全世界が知っての通り、核兵器も所有してる。(よく罪状調べ挙げたな・・・。)

 ただね、何しろ、哲学の国だしね。ものごとをかなり深く考える、考えてるってのは間違いないでしょう。


03年12月22日(月)   ダスティン・ホフマン、ロビン・ウィリアムズ

 日付変わって、本日の1本目。

 今月15日、ロビン・ウィリアムズがクウェートの米陸軍基地を慰問。翌16日にはバグダッド国際空港をも訪れ、グーッモーニング、バクダッド!」を交えて速射砲的な喋りを展開、集まった米軍兵士の歓声を浴びたそうです。彼の「グッドモーニング・ベトナム」は観たことがあって、アメリカ側からとは言え、戦争の空しさは感じられたし、ユーモアも含めて、嫌いな俳優じゃなかったんだけどな。

 今月18日の朝日朝刊の「文化総合」面に、出演した新作「ニューオーリンズ・トライアル」が好評だというダスティン・ホフマンのインタヴューが紹介されてた。
 ダスティン曰く
「米国民はイラクで米国人が何人死んだかと訊くが、イラク人の死者は気にしない。貧困に取り残された人々が絶望のためにテロに走ることを米国は理解すべきだ。」
 これにはほとんど賛成。後半の文の「貧困」を「不公正と貧困」と言い換えれば、僕は完全に同じ認識です。
 彼の新作は陪審コンサルの暗躍を描き、陪審裁判の公平性に疑問を呈すものですが、原作がタバコ被害を扱っていたのを、彼の提案で銃規制を扱うことに変えているとのこと。
 ダスティンは 1983年の初来日の際、自国の原爆投下を謝罪した。日本の「名優」が、日本国が過去に侵略したアジアの国にでも訪問した際に、でかつ同様の attitude を取れるとしたら、その日本の「名優」は誰だろう? 一人もいないとは言わないんだけど。