04年 5月27日〜6月 6日

最近の子供はどうか分らないけど、今の大人の多くはガキの頃に日記を何日か書いた経験があるのでは?
斯く言う私もその一人、当然この日記も不定期です。 (2001年8月19日、記)


04年 5月27日(木)   壊れ始めたボクを 僕が救い出すために

 壊れ始めたボクは、僕によって救い出されるために、記録されなければならない。

 【2004年 3月までのあらすじ】
 興味ある人間はいねぇだろうが、見たけりゃ 雑感 で拾ってくれ。捨て猫を拾うように拾ってくれ。クウェンティン・タランティーノ主義ユング学派心理学者とエドワード・サイード主義フロイト学派の精神分析学者なら面白いかもしれんぞ。・・・そんな学派あるわけないがな。


 【2004年 4月 1日以降のアブノーマルな世界】
  興味ある人間はいねぇだろうが、見たけりゃ 雑感 で拾ってくれ。捨て猫を拾うように拾ってくれ。


 【5月23日(日)以前】
  興味ある人間はいねぇだろうが、見たけりゃ 雑感 で拾ってくれ。捨て猫を拾うように拾ってくれ。


 【5月24日(月)】
  7時前に起き、家を7時半に出、9時前に出勤。23時40分退勤。24時ちょっと前の最寄駅到達可能な終電で帰る。0時30分過ぎ、駅着。下車。熱を出して頭痛もある妻のクルマの迎えを受ける。ボクは人非人、ニンピニンだね。
  もちろん本当は既に 5月25日(火)だ。午前1時過ぎから、夕食ならぬ夜食を食う。妻は未だ頭痛あり、自分も早く寝床につこうと妻の手料理を腹にかき込む。いつものようにヤクを飲む。しかし寝床についた後も、苦しい。僕には自分の日常が信じられない。出戻りの日常は結局出戻りには凄まじいものとなったが、しかし出戻りであるがゆえに、ボクは僕として表現していない。出戻りにも人権はある。アムネスティだって、きっと、そう言ってるぜ。
  夜中というか未明というか腹の激痛。 超リーゲ。喘ぎ苦しむ地獄の味噌蔵。キタナクテわるかったな。しかし、僕の第一の友人のカイシャのエライさんの 有印私文書偽造事件 と比べりゃキレイなもんさ。リーゲなんて、そんなカイシャと比べりゃマシだぜ。


 【5月25日(火)】
  7時前に起き、家を7時半に出、9時前に出勤。残業するも、早めの退勤。久しぶりに、自分で二郎さん神経科を訪問。 二郎さんは内科もやってるからね、神経とココロとおなかを診てもらったよ。
  ずいぶん久しぶりに、平らな日に、妻子と夕食を共にした。 うちは晩飯遅い方だしねぇ。だけど、その前の最後はいつだった? この日の僕のご飯は、オカユさ。
  そう言えば、注文してあった、アムネスティ販売のイマジンのTシャツが届いていた。アムネスティは、出戻りにも、出帆者にも、居残り者にも、アメリカ人にもイラク人にも、全ての人に、人権はあると言っている。はずだ。人権って分からないかい? ヒューマンのライツだよ。
  体調は思い切りわるく、おなかの具合も良くならない。いつものようにヤクを飲む。早めに寝床に向かった。だが、身体が痛い。首が痛い。腕が痛い。手が痺れる。足が痛い。足が痺れる。頭が痛い。頭が痛い。気持ちわるい。吐き気がする。喘ぎ苦しむ地獄の酒蔵。何度も目を覚ます。


 【5月26日(水)】
  7時前に起き、いつものように出勤しようと思ったが、7時頃ヨメさんに起こしてもらったボクは、頭痛や吐き気で、猛烈な脱力感で、起きることができない。一瞬迷ったが、やむを得ず、もう1時間、横になることにする。
  僕はこの4月1日以降、フレックスさんな職場に元々の定時の9時前に出勤してきた。間に合わなかったのは、電車が遅れた1日分だけだ。睡眠障害なボクは3月以前は10時出勤が多くなっていたが、4月1日以降は、ガチョウになったこともあって、無理矢理9時前出勤を続けた。鬼のように片付け作業(仕事というより作業なのだ)があり、早く出勤するに越したことはない。だが、昨日は、この日は起きれなかった。どうあっても、起きれなかった。やむを得ず8時半過ぎに家を出た。いつも通りにヨメさんがクルマで送ってくれる。ヨメさんはこの後パートタイム。しかしフルタイム並みの活躍だ。
  ボクの家からは本当はバスがある。でも、バスに乗っていく力が湧かない。いつもヨメさんに駅まで送ってもらっている。帰り? 帰りはね、もうバスはないんだよ。終わってるのさ。タクシー? あんな長蛇の行列に並ぶ力がボクにはないのさ。長い蛇の行列だぜ。僕はね、本当は、本当に、長いものに巻かれるのは嫌いなんだ。出戻りだけどさ。嫌いなもんは嫌いさ。無理して生きてしまったのさ。いや、無理しなかったからなのか。知るかっ。
  本当なら10時前に職場に着くはずだが、若干遅れたような気がする。途中の駅で電車が一時的に止まったのだ。「乗客のなかに急病人が出ているため」とのアナウンスが聞こえた。ビョーニン? 俺のことかい? ボクはそう思った。
  いつものように異常な業務環境で仕事、いや、作業をした。人員が一人減り、その異常度はいや増ししている。ますます異常な、異常を限りなく極めるところで(まぁ世の中にはもっと異常なところはあるのだろう、過労死だって過労自殺だって世の中にはある、あ、でも僕の職場も両方ともに実績があるじゃないか)、僕がボクとして働いた。頭痛でも吐き気がしても熱があっても、いかにも顔色がわるくたって、異常は僕を容赦しない。なぜか。それは、異常だからだ。クルッテいる。退勤前に、「出勤ボード」に「5/27 10AM 」と書いておいた。23時40分退勤。終電。
  いつものように、妻が、ヨメさんが、クルマで迎えに来てくれる。0時半過ぎ。疲れ果てて後部座席に身体ごと倒れ込む。倒れ込むのは身体ごとに決まっている。1時過ぎに夕食ならぬ夜食を食す。ご飯は、オカユさ。
  4月1日以降でもっとも危機的な疲労困憊状態だろう。とにかくもう、ほとんど余力というものがない。身体を動かすのが面倒だ。何時に寝床についたか、いちいち憶えていない。いつものようにヤクを飲んだ。いつものように、眠りは良くなかった。浅い。喘ぎ苦しむ地獄の酒蔵。
  寝る前に、妻に伝えておいた。8時、いや、8時10分にしてくれ。もう、明日も10時出勤にする。しかし・・・


 【5月27日(木)】
  8時10分に、一瞬、起きようとしたが、まさしく、一瞬のうちに無理なのが判った。身体が動かない。あまりに重い。それ以前に、頭痛がひどい。気持ちわるい。とにかく、頭が痛い。ハラも良くない。熱もありそうだ。身体が動かない。無理だ。それでも、もう一度、少しの間、出勤しようかと迷った。地獄のミソ蔵状態の職場は1日置けば更に修羅を増す。しかし、やめた。この状態で出ても何ができる。昨日だって既にひどいもんだったが、今朝はワを掛けている。休もう。もう今日は休もう。そのまま横になり続けた。
  10時に目覚ましを鳴らした。上半身だけ起こして、職場に電話する。派遣職員の人が出た。休みを伝え、派遣会社の電話番号を訊いた。今日、僕宛てに連絡がある可能性があるのだ。4月1日以降いるはずだった、3月までと比べて 減 状態の派遣職員補充の話がようやくのこと進みつつある。それは3月までに復すのみ。しかし正職員(正ってなんだ?)が別途、1名減ってしまっている。異常な環境はますます異常になっている。
  電話を課員に代わってもらった。職制上は僕の部下に当たる。ボクの机上は地獄のミソ蔵状態だ。しかし、昨夜の退勤前に気になった伝票があった。そのことを確認する。休んでわるいな。僕はボクだが、僕は僕で人間だ。休ませてもらう。
  カーテンを閉め切った暗い寝床から、派遣会社に電話する。今日連絡をいただく可能性があったと思うが、体調くずして休んで自宅にいるので、返答ができないことになるから、一旦こちらからご連絡した、と伝えた。明日以降について協議する。電話を切る。起こしていた上半身を横にし、毛布をかけ、眠りを試みる。疲れきったボクは、眠ったようだ。どうせ、浅いのだろうが。
  昨日は、息子が陸上記録会。息子は走りは苦手だが、応援に行った妻によれば、一所懸命走っている様子がよく分かったそうだ。しかし、昨日は暑く、熱射病的な症状になり、頭も痛く、夕食を食べられずに寝たんだそうだ。今朝も起きてから調子が戻らず、今日は学校を休んだ。夕方、ヨメさんが帰宅した頃、担任教師から電話があってヨメさんが受けたが、他にも同様の児童が出たらしい。
  夕方4時近く、ボクはようやく身体を起こし、階下の居間に向かった。小さな我が家さ。あっと言う間に居間に着くはずだが、長く感じたくらいだった。学校を休んだ息子がテレビを観ていた。いや、MDを聴いていたか。ロックとブルーズで育った息子は、最近はJポップってものをけっこう聴くようになってる。
  その日、初めての食。食パンを半枚。抗うつヤクと椎間板のびたみんヤクと神経性腹痛緩和ヤクってやつを飲む。息子としばし会話。熱を計る。6度9分。体感体温はもっと高い。150キロ以上に感じられる速球が球速計では140台だったりすることがあるというだろう。関係ねぇか。また、寝床に戻ったよ。
  夕方5時過ぎ、もう一度起きて、ようやくパジャマからジャージに着替えた。


 おぞましきこと、限りなくあり。いくらでもあり。
 出戻りの自業自得だからとあきらめるわけにはいかない。大体、僕が僕でなくなったら、僕はおしまいなんだ。
 正しくないこと、人道にもとること、人間的でないこと、これを、不正、非人道、非人間という。何も感じないでいられる人間がいるとしたら、僕にはそれが信じられない。そんな人はいない? みんな我慢している? いや、俺にはそうは見えんぞ。こんなに大変なのに待遇がどーのとか言いつつ、大変だとは言葉にしつつ、けっこう喜々としているように見えるぞ。いや、そんなことない、ボクラは違う。本当にそうか。俺にはそうは思えないんだ。俺は苦しければ苦しいで、しかしこっちだって大変だ、ため息をつけば、ため息つかないでくださいよ、こっちはもっと(・・・おいおい!)ため息つきたいんですよ、そういうお前は俺には異常にしか見えないぜ。ため息比べしてどうするんだ。23時40分に俺が退勤した日に、4時まで、5時まで働き続ければ、あんたの方が我慢していて大変だ、こっちだって大変なんです、こっちはもっと大変なんですか。異常比べをしてどうするんだ。そう思う俺の方が世の中では異常に見えるのかい?

 僕は僕だ。僕でしかいられない。生きるためにはみんな自分を変えているんだぞ? 子供みたいなこと言うんじゃない? わるかったね、僕は子供だとか大人だとか言うつもりはない、僕は僕でしかない。目の前で非人道があってもそのまま働ける、目の前で不正が、不法があっても無言で、無表情でいられる、それがカイシャの大人かい? わるかったね、いや、わるかったねって、僕が僕に言うべきかい?
 僕は、頭がおかしくなってしまうわけにはいかない。倒れるわけにもいかない。僕はどこまでも、正常でいなくてはならない。だから、壊れ始めたボクを 僕は救い出さなくてはならない。
 僕はきっと、大丈夫だろう。僕がおかしくなったら、妻も、息子も困るのです。妻も息子も悲しまないはずがないじゃないか。だから、僕はきっと、大丈夫だろう。単純なことさ。シンプル・イズ・ベストかい?

 ヘイ、銃声よりも、ダイナマイトよりも、衝撃なのは、愛だろう
 ヘイ、水晶よりも、ダイヤモンドよりも、透明なのは、愛だろう

 (デイト・オブ・バースさん、ありがとう)


 異常が充満している。嫌悪、不快、唾棄、侮蔑。どんな言葉を投げつけても足りない。

 ただ、僕が思うのは、転石時の自分といい、ブーメラン後の今の自分といい、僕には生きる能力、生き抜く力というものがないんだろうか、なんてなさけないんだろうということです。結局、異常だ異常だ、おぞましい(僕が目の前で見たものは、真人間なら、強烈な不快感、嫌悪感にさいなまれる、僕は人間性とはそういうもののはずだと信じてる)、しかし、要するに、僕は生きる力が足りないのではないか。こういう人生の立ち回りをしてしまっていること自体、力の無さではないか。

 ただ、とにかく僕は生きていかなくちゃいけないし、生きたいし、頭もたしかでなくちゃいけないし、精神も保たなくてはいけない。僕はそうありたいし、また、そうでなければ、僕は衝撃と透明を保ちつづけることができない。
 だから、僕は、僕でありつづけるだろう。きっと保つだろう。ギリギリのところであっても、とにかく保つだろう。

 ヘイ、銃声よりも、ダイナマイトよりも、衝撃なのは、愛だろう
 ヘイ、水晶よりも、ダイヤモンドよりも、透明なのは、愛だろう

 デイト・オブ・バースさんたちは、愛って、どのくらい衝撃で、どのくらい透明なのかって歌ってる。銃声よりも、ダイナマイトよりも衝撃で、水晶よりも、ダイヤモンドよりも透明だって歌ってる。僕は僕を、ボクを、僕を、救い出すことができるだろう。僕はそう想うほかない。 _


04年 5月30日(日)   ドツボから 抜け出せる日はある? あるはずだ。

 体温昨日7度ジャスト。10時半頃(一応午前ね)起きた後に計った今日の体温はまたしても7度ジャスト。それがどうした。体感体温はもっと高いぞ。どうなっとるんや。
 他に書く気も起きず、この間の続き。壊れ始めたボクは、僕によって救い出されるために、記録されなければならない。
 ま、壊れてもいけない。

 とりあえず1日だけさらっと戻っておくと
 【5月27日(木)】はついに身体起き上がらず、作業現場への出勤は休み、1日横になり、夕方5時過ぎ、再起床し、ようやくパジャマからジャージに着替えた日。

 【5月28日(金)】
  6時40分に根性起きし、早めの出勤。早めの作業開始。今日は飲む約束していた日だが、飲むような体調ではない。しかし、出勤して来れたということは、前日よりはだいぶマシ。しかししかし、残業、ましてや深夜残業するような体調ではない。もうオレ、限界だよ。いや、限界ってのは、それ以上続けたらヤバイってことかい? なら未だ限界まだ正確に来ているか分からないってことにしとこう。「限界」だって言ったってオレの意思に沿って動けるかも断言なんかできんもんね、オレは倒れるわけにはいかない。僕は、倒れるわけにはいかないのだ。そう思って続けるヤツが結局倒れたりするのかい? 狂ってるよ。まったく狂ってる。僕には狂気としか思えない。それが、あれが人間として許容できる範囲のことなら、いや、たしかに人間の世界には何でもあるな、それは、あることです・・・
  ただ、少なくとも僕は出戻りはしようとして実際に出戻ったが、キレてしまった世界で働くことまで自分として受け容れようなどとは思っていなかったし、今も思っていない。オレの周囲には結局のところ受容して、曰く「がんばっている」人がいるよ。オレは他人の意思に介入はできん。
  ロックさん、あなたの状態なんて、ボク達から比べれば大したことないですよ、みんな「がんばっているんです」。そうですか、そりゃよかったね。ただ、俺はキミ達とは違う人間なんだ。キミ達と同じモノサシで測れる人間じゃない。キミ達から見れば馬鹿げて見えるのかもしれない。おまけに出戻りだ。出戻りさせていただいた人間だ。でも、そういうことかい? そうじゃないのは分かってるよ。俺が出戻りであろうがなかろうが、実は関係ない。とにかく「ワガシャの厳しいジギョウ環境のなかでは、身を投げ打って作業するのです、当然じゃないですか、メシを食うってのは大変なことなんですから」。そうかい、そうかい、そりゃよかったな。俺はとにかくキミらとは違うんだ。1日25時間「ワガシャ」に投げ打って、奴隷のように振る舞おうが、エライさんが不法行為やろうが、おカネの無駄遣いしようが、「ワガシャの明日」のためなんですって、そもそもそれは何も「明日」のためにならんだろう。そんなもので築く「明日」にどんな意味があるかと思うが、そもそも、それで「明日」があるはずがないし、あったらいけない、いつかそんな「明日」はなくなるべきだよ。
  何? ロックさんの「明日」はあるのかって? 分からんな。ただ、俺には、月の向こう側を本当に受容して、曰く「がんばる」なんてことはできないね。それは正気の沙汰じゃない、俺にとってはな。ヨソ様は知らんよ。俺は結局、俺のことしか分からんのだ。月の向こう側ではオレがオレである余地がなくなる。僕が僕である余地がなくなる。僕が僕である余地がなくなるってことは、僕が消えるということだ。僕が体温を感じる世の中から、僕が消えるということだ。僕は絶対に消えたりしない。消えるわけにはいかない。消えたりしない。消えたりしないための抑制をしていると、自分の内部に月の向こう側を作ってしまうのかい? いや、分かんないな。僕はとにかく僕でいる。消えたりしない。

  話がズレたな。とにかく金曜は、残業なんかやる体調じゃなかったよ。しかし、精神の衛生状態は実際限界に近かったんだ。飲まなきゃどうにもならん。飲まない人は飲まずにいられるのにね。単なる酒飲みの言い訳かね。
  体調はわるい。しかし飲む。体調はわるい、だから早く退勤させてもらう。じゃぁな。で、明るいうちに居酒屋に行ったよ。飲んだ飲んだ、体調わるいのにしこたま飲んだ。
  終電手前で帰った。妻に駅まで迎えに来てもらった。食べるのも食べたのに、帰宅してから冷麦ゆでてもらった。たらふく食べた。僕は、体調わるかったんだ。おなかの調子もわるかったんだ。なのに食べたいと言って食べた。
  そのうち、TVで朝生をやり出した。イラクで銃撃された亡くなったジャーナリスト、橋田信介氏、小川功太郎氏のことを取り上げていた。そのうち、日朝問題に話題が移った。後半はビデオ録画にして寝床についた。


 【5月29日(土)】
  途中一度起きて、妻が用意しておいてくれたパンと弁当を食べた。で、寝床に戻る。しかし、暑い。たまらない。午後3時半頃、居間にまた降りる(狭いのに時間が長く感じる)。妻が帰宅した。
  僕は朝生のビデオを観始めた。そのうち、息子が帰ってきた。今日は試合だ。バント安打なのか、エラーなのか、とにかく出塁。もう1打席は三ゴロだったようだ。息子はもう顔が焼けている。もうかなり黒い。一所懸命がんばっている息子と、応援に行けず、行かず、家でうだうだと横になっている親父。こんな父親は父親失格だ。失格だ。失格だ。熱を計った。7度だった。今の僕のどこが、体温を7度にしているんだろう。風邪? 神経? 内臓疾患? 知るか、そんなもん。とにかく身体が熱い。熱いというより熱っぽい。ぼわーっとする。知るか。
  日曜はゴスペル・ワークショップ、今期のコンサート。僕は出られない。こんな体調では出られない。土日にひたすら疲れを取り、何とか体調を戻し、月曜から出勤する。それだけで精一杯。正真正銘、もはやそれで一杯なのだ。
  6月に行なわれる パレスチナ子どものキャンペーン の会員総会、出欠のハガキ返信の締切は5月末日だった。ずいぶん前に、出席のつもりで「出席」に印をつけ、投函するだけにしてあったが、本当に出れるだろうかと思いながら、ずっとハガキを放置していた。出れない。無理だ。休日に出掛けるなんて。僕は休日はサナトリウムにいるしかないんだ。僕だけにとってのサナトリウムに。サナトリウム? 違うな。違うけれども、とにかく外に出る体力は残っていない。もう少し前から、完全に磨耗してしまったのさ。
  僕は、ハガキを「欠席」に改め、議長に一任の委任状を記し、投函を明日の妻に頼んだ。


 【5月30日(日)】
  10時半頃起きた。もっと寝ていたかったが、暑くてたまらない。起きた。妻が用意してくれてあったパンを食べる。テレビはサンプロ。熱を計る。今日も7度。
  そのうち、昼になる。妻が用意してくれた弁当を食べる。ニュースを見る。
  今日も息子は野球の試合。トーナメント。昨日勝ったから、勝ち進んでの次の試合。また勝てば、決勝かな? 妻は応援に行っている。僕はそもそも起きた時から間に合わないよ。身体は動かない。これ以上体調がわるくなると、明日の出勤がきつくなる。仕事場は、いや、作業場は、既に地獄の味噌蔵状態だ。あんなの、仕事じゃない。仕事は、外の誰かに喜んでもらってナンボ。そうして、自分も仕事の成果に喜びを得る。少なくとも自分の喜びは得る。だが、外の誰かなんて関係ない、なかのエライさんが、なかにいる、つまり内部の、身内のエライさん向けの仕事をする、させる、業務環境、人員態勢の現実などいとも簡単に無視して。いや、無視するという言葉には、一旦認識してから文字通り無視するというニュアンスがある。そうじゃない、ハナっから、そんなこと考えてなどいないのだ。やろう、これは「おエライ様」がやろうって言ってるんだ、これは「おエライ様」に約束したんだ、御前会議でね、私は約束したんですよ、他にもこんなのがある、そうなんだ、お代官様の命令なんだ、やってもらわなきゃ私が困る、いや、しまった、本当のことを言ってしまった、言い直させろ、やってもらわなきゃワガシャが困る、ワガシャのためなんだ、ウソをつけ、ウソをつけ。

  繰り返すが、目的は、外の「お客様」ではない、内の「おエライ様」に過ぎない。そんな作業を倒れそうになりながらやって何の意味がある? 内の「おエライ様」が本当に、この期に及んで望んでいるのかだって、本当は、定かでない。定かでないが、そうかもしれない。少なくとも、「小おエライ様」は「大おエライ様」に確かめない、確かめでもしたら、「大おエライ様」がキレるだろうきっと、ははは、それが「小おエライ様」のきわめて明確で揺るぎない「お立場」だ。「エライ様」は自分の役割や責任など関係ない。「お立場」だけが問題だ。しでかしたら「大おエライ様」やお代官様に叱責される、罵倒される「お立場」だっていう「お立場」、それしか考えていない。
  まして、現在の業務環境、人員態勢など、改めて説明しようともしない。そもそも「小おエライ様」は、常に、そんなことは考えない。何をしたいか、それしかなく、どうやってそれが実現できるかなどに関心はない。これをしたい、するべきだ、そうだ、だから、やろう、それだけだ。コドモだよ全く。
  「おエライ様」が気にするのは内部だけだ。ウチの更なる「おエライ様」が認めてくれるだろうか、あるいは、喜んでくれるだろうか、あるいは、望まれているだろうか。外と言えば、せいざい監督官庁だ。監督官庁のお代官様の命令なら、部下が病気だろうが倒れかかっていようが、崩れ落ちようが、彼らには関係ない。崩れ落ちれば、しばらくすれば、歯車を代えるだろう。歯車なんだ。歯車は、自分を歯車だなんて考えていない。歯車は何も考えないから歯車だ。そうなっていることに気づかない。オヤ機械の命じるままに回る。そしてそのオヤ機械も、所詮、機械だってことだ。いや、これが妙に感情があってね、歯車だと思ってる相手に対して、キレたりするんだ。お代官様もおんなじだ。異常だよ、奴ら。みんな、ヤツらの異常の様を見る機会があればいいのにね。それでも、わるいのは俺たち、私たち、あるいはワガシャなんだから、ってそう言ってるのなら、もしもね、そういう人がいれば、そう言って狂気を受容するのなら、その人はその人でもはや狂気の仲間入りだよ。

  「おエライ様」はどうすればできるかなんて関心ない。外の顧客にとって必要なのか緊要なのかってことにも関心ない。外の顧客が、外の本当のステイクホルダーが(お代官様じゃないよ)、そんなものを心待ちしているのかどうかって、そんなこと考えたこともない。しかし、ウチの更なる「おエライ様」に約束しちまったら、ウチの更なる「おエライ様」がお望みになっているのなら、あるいはお代官様の命令なら、とにかくやろう。やる意味? まぁまぁ、そういう抽象的なことは考えないで。「忙しいかもしれないが、とにかく、やりなさい」。

  外の本当のステイクホルダー(くどいがお代官様じゃないよ)のご意向など気にしない、喜んでいるかだって知ーらない、だけど、ウチの更なる「おエライ様」のご機嫌には本当にご執心だね。

  お代官様も、同じ穴のムジナだろう。どうせ、おまえにはおまえの「バカ殿様」がいる。おまえは怖くてしかたない。その恐怖から、町人くずれの下っ端には暴力的になる。暴力? 言葉の暴力ね。ほとんどDVだよ。本当は同じ穴のムジナの下っ端さ、そこに暴力振るうんだ、罵倒の言葉でね、相手が倒れようが関係ない。同じ穴のムジナってのは、詰まるところ、身内なのさ。身内への暴力、Domestic Violence 、リッパなDVだろうが。あんた、だってさ、出来のわるいむすこか何かを叱るように、いや、ヤツ当たりするように、下っ端を罵倒するだろう。出来のわるいと思ってるむすこを、むすめを虐待するように、罵倒しているだろう。罵倒ってのは倒してるんだよ。

  「小エライ様」といい、「大エライ様」といい、お代官様といい、みーんな異常だよ。なんでこんなヤツがエライさんなの? どうにかしてるよ? ・・・そう、僕の友人は言ってたよ。僕の友人とはいつでも連絡取れるんでね。

  そうそう、人員が減っても内向きなのは変わらない。ますます、変わらない。ということは、変わらないというよりも、内向き異常度はいや増ししている。人員は身体の調子をくずした。もう休むしかなかった。ずっと以前からSOSは出ていた。ずっとずっと以前から、環境を変えるべきだった。しかし「おエライ様」は変えない。下の者が強力にSOSを代弁したら、突如腰を上げた。その後も、ひたすら内向きだ。そう、僕の友人は言ってる。彼はオンデマンドで僕に情報をくれるよ。
  内向きのベクトルで、言い訳で「仕事」という名の、その実、作業をやらせる。だから、結局書類なんて知ったこっちゃない。内面(うちづら)上は書類は全て遡及でいいのだ。有印私文書だって偽造してしまう。外面(そとづら)? そんなのオッケーだろ、調べられる時に間に合っていればわからないのさ。いや、お代官様だって知っちゃいるのかもしれないが、そういう時は、上手くやっておいてくれれば、気づかない振り、知らない振りをするんだよ、お代官様もね。体裁さえ整えれば、とりあえずそこで嘘が発覚しないのならいいのさ。そんなやり方してるから、何ヶ月経っても、翌年度に入っても、やらないものは実はやらない。外面(そとづら)のお代官様の圧力さえ切り抜けられるものならば、放っておく。信じられないほど放っておく。でも、無理はないんだ。本当のステイクホルダー(だからさ、これはお代官様以外のことなんだって!)にどれだけ重要なのか、その優先順位だって何だって関係ない、とにかく手当たり次第やりましょう。走りながらやればいいのです。おいおい、何にも考えないでただ走りながら作業を片付ければいいのかい? いや、考えてはほしいなぁ。何を考えろって言ってんだ、おまえら。ただただ片付け、「大おエライ様」やお代官様向けにアリバイ作って、溢れりゃ溢れたときだ、見えないところならいいぞ。おまえらが口に出して言わなくても、やってることは、やらせてることは、結局そういうことなんだよ。事実、常に溢れまくってるじゃないか。狂ってるよ。こういう作業は月の向こう側の、月の裏側の作業なんだ。そう、僕の第一の友人が、そのカイシャの惨状を教えてくれたよ。


 今日は夕方からゴスペル・コンサート。妻にだけ出てもらう。僕は出たかったけれど、これもやめる。出ない。僕はもうドツボにはまってる。ツボは蹴飛ばせば割れるかい? 蹴飛ばして割ったら、僕に何が待ってる?

 僕は家族のいる居が根城だ。だが、外に出て作業場に行くと、ほとんど仲間がいないように思う。言葉が通じる人はいる。伝わる人はいる。しかし、当然ながら、みんな、人それぞれのコミットメントがあって、その作業場に出てくる。若者は、できるんなら、もっと気持ちよく仕事ができるところを探した方がいい、やっぱりそう思う。作業でなく仕事ね。若いうちに活路を見出し、誰かさんのように、決して出戻ったりはしないことだ。いや、ロックさん、そんなこと言われなくたってしませんよ、そんな馬鹿げたこと。

 僕はいる以上は何とか自分の信じることに向かう方向に自分の手足を動かしたい。少しでも動かしたい。それは、自分一人ではできないだろう。しかし、僕は僕の見た「在りのまま」の醜悪の、その一部を、彼らに話してしまう。自分の考えを語ってしまう。見なくて済んだことまで、僕の語りにより、見てしまう。幻滅する。こんなところ、嫌になりますね? うーん・・・。僕は言葉を失う。少しでも、ほんの少しでも前に気持ちが向く話をしようとする。しかし、幻滅は簡単に消えない。簡単に消えるはずがない。簡単に消えたら、僕が語りたい相手ではない。僕は、仲間などいない。僕はずっと一人だろう。このままドツボにはまったまま一人でいるのか。不正を見、強烈な不快を見、醜悪を見た僕の第一の友人は、ネットに情報を書きつけている。しかし、それでどうにかなるのかい? どうなるのかな。

 僕は、頭がおかしくなってしまうわけにはいかない。倒れるわけにもいかない。僕はどこまでも、正常でいなくてはならない。だから、壊れ始めたボクを 僕は救い出さなくてはならない。

 異常が充満している。嫌悪、不快、唾棄、侮蔑。どんな言葉を投げつけても足りない。

 転石しても、ブーメランのように転石しても、結局おなじだ。だから、同じだったというべきか。
 僕には生きる能力、生き抜く力というものがない? いや、そうかもしれないが、ないからってどうする。僕が目の前で見、あるいは、巻き込まれかねない光景は、真人間なら、強烈な不快感、嫌悪感にさいなまれるはずの光景だ(僕は人間性とはそういうもののはずだと信じてる)。しかし、要するに、無言で、無表情で、あるいは忍従して生きる人はいくらもいる。なかには過労死する人も過労自殺する人もいるかもしれない。しかし、多くの人が、動物のように動いている。歯車のように回っている。溶接ロボットのように動いている。油を注せば、機械はまたよく動くんだ。何? 壊れた? よし、修理に出せ。予備の機械を持って来い。なければまた買え。
 僕は生きる力が足りないのではないか。こういう人生の立ち回りをしてしまっていること自体、力の無さではないか。

 僕はきっと、大丈夫だろう。僕がおかしくなったら、僕の一番大事な存在が、困るのです。困るというより、悲しむのです。僕がそれを望むなんて有り得ない。だから、僕はきっと、大丈夫だろう。単純なことさ。

 ヘイ、銃声よりも、ダイナマイトよりも、衝撃なのは、愛だろう
 ヘイ、水晶よりも、ダイヤモンドよりも、透明なのは、愛だろう

 ただ、とにかく僕は生きていかなくちゃいけないし、生きたいし、頭もたしかでなくちゃいけないし、精神も保たなくてはいけない。僕はそうありたいし、また、そうでなければ、僕は衝撃と透明を保ちつづけることができない。
 僕が頼るのはこういうことだけなのかい? 僕の根拠はこれだけかい? 他に僕は CAUSE があるんだろうか。なくてはいけない? 他になくてはいけない? 僕はとにかく、僕でありつづけなければならない。とにかく保つだろう。僕は僕であることを。僕の心も、僕の身体も、保たなくてはならない。

 デイト・オブ・バースさんたちが歌う衝撃と透明を、僕は保ちつづけるのだ。それ以外は? その他には? 分からない。僕はまるで子供のように分からない。それでも僕は僕を、ボクを、僕を、救い出すことができるだろう。 きっと、できるだろう。いや、絶対に、救い出す。僕は叫んでいる、寝床で。そのうち、歩きながら、叫び出さないとも限らない。ほら、そうやって歩いている人がいるだろう。みんな、月の向こう側に行ってしまった人だと思われているんだ。でも、僕は、向こう側には行かない。僕を救える人などいない。僕は僕であって、それ以外の誰でもないからだ。僕は僕でしかない。
 僕を押し留めている存在ならある。僕はその存在のおかげもあって僕自身を押し留めている。でも僕は僕を救い出すなんて難儀なことをそれが家族であれ、お願いしたりしてはいけない。そんな苦しいことさ、いや、そもそも無理だ、僕自身ではない誰かに頼むことじゃないんだ。僕は僕を、ボクを、僕を、救い出すつもりだ。 どうやって? 知るか、そんなこと。とにかく、僕は僕を、救い出す。 救い出すはずだ。救い出す。いつか。いずれ。そのうち。近いことだってないとは言い切れないじゃないか。未来なんて知るか。分かったもんじゃない。僕は僕を救う。僕のために、そして、僕自身にとって世界で一番大事な存在のために。それだけだ。今体温計ったら7度3分。体感はもっと高いぜ。熱がなんだ。知恵熱かい。知ったこっちゃないぜ。作業には向かんな。でも仕方ないんだろ、すみません、ウォルフレンさん、いや、ロックくん、私に謝られても困る、何とかするんだ。
 僕は僕を、何とかして、救い出す。 _ 


04年 6月 6日(日)   君が僕を知ってる


今までしてきた悪い事だけで
僕が明日有名になっても
どうって事ないぜ まるで気にしない
君が僕を知ってる

だれかが僕の邪魔をしても
きっと君はいい事おもいつく
何でもない事で 僕を笑わせる
君が僕を知ってる

何から何まで君がわかっていてくれる
僕の事すべて わかっていてくれる
離れ離れになんかなれないさ

コーヒーを僕に入れておくれよ
二人のこの部屋の中で
僕らはここに居る 灯りを暗くして
君が僕を知ってる

何から何まで君がわかっていてくれる
僕の事すべて わかっていてくれる
上から下まで全部わかっていてくれる
僕の事すべて Baby わかっていてくれる
わかっていてくれる わかっていてくれる
わかっていてくれる ・・・・・・・・


 昨日、RCサクセションのCDを2枚買った。前から知ってる曲だけど、「君が僕を知ってる」。作詞作曲:忌野清志郎、編曲:RCサクセション・椎名和夫。名曲です。
 キヨシロー、弱ってる僕に転載させてくれてありがとう。あ、話してないや。勘弁してね。

 君が僕を知ってる。僕は君を知ってるかな。僕は君をもっと知らなくちゃ。知るってことは行動に表せないとダメなのかな。僕は君をもっと知らなくちゃ。弱ってるなんて言ってちゃダメだ。僕は本当に弱くはならない。僕は僕を、何とかして、救い出す。
 君は僕を知ってる。僕も君を、そして可愛いヤツのことだって知らなくちゃ。
 君は僕を知ってる。コーヒーを僕に入れておくれよ。

 この1週間も、君と話す時間はほとんどなかったね。帰ってきて飲んで食べて寝るだけなのさ。ヤツはとっくの前に眠ってる。
 でも、君は僕を知ってる。コーヒーを僕に入れておくれよ