ディランのセカンド・アルバム(1963年リリース)。1 はあまりに有名。PPMが歌ってヒットさせたのが先だった、しかしディランを知らない人にも「知られてる」(ほぼ必ず聴いたことある)ような、世界中に知れ渡った曲。もうだいぶ前、1992年のディランのデビュー30周年トリビュート・コンサートでは、スティービー・ワンダーがこの曲を歌ってた。
ちなみに、その時にディラン自身がトリを務めて最後に歌ったのが、2 だった。7 はそのコンサートでクラプトンが見事なブルーズのアレンジにして歌った曲。僕は 6 も好きだな。
要するに「いま」にも歌い継がれる名曲の数々が収められているアルバム。
ディランほど、他のミュージシャンにカヴァーされるアーティストも珍しいかもしれないが、それはディランが類希なソングライターであること、そしてディラン自身のパフォーマンスがあまりに個性的で(歌う度にメロディが微妙に、時に大きく変わり、さらには歌詞まで変わってしまうことも)、他のアーティストがもうちょっとは「普通に」歌ってみるのが、またディランと違う(大抵は「普通の(?)」)魅力を出したりするからだろう。
このアルバムが出た年、僕は3歳。もちろん、リアルタイムでは聴いてません(笑)。
このアルバムは、ディランの歌が当時のアメリカの公民権運動や反戦運動で歌われ、また世界中の反戦運動や人権運動で頻繁に歌われていた時代の初期の作品。
当時はディランはフォーク・シンガーとみなされていたわけだけど、実は「ロックの人」であることは後の歴史にも、彼の様々なパフォーマンスにも現われている。まぁ狭義のジャンルはどうでもいいんで、この頃はフォークでしたって言ったって別に構わないんだけど。
ちなみに、このアルバムのジャケットの写真に、ディランと腕を組んで写っている女性は当時のディランの恋人スーズ・ロトロという人らしい。たしか、あとでディランは彼女にフラレるんだけど、彼女は左翼的な社会運動に参加していた人で、ディランはこの恋人からも大きな影響を受けていたらしいです。
(2005年10月8日、記)
1997年に出たベスト盤。ベストと付くアルバムは色々あるらしいが、ディラン・マニアではなかった僕として、どれか沢山聴けるアルバムをと思って調べて選んだものです。買ったのはリリースから8年後ね。
1 は、初出は1963年のセカンド・アルバム です。3 もそうだ。
5 は強烈な歌詞、大音量なんかでなくとも強烈なロック。僕はこの詩には圧倒されます。それでいて、圧倒されてはいけないと思いながら立ち向かいたくなる世界です。
1992年のディランのデビュー30周年トリビュート・コンサートでは、メレンキャンプが豪快に歌ってました。
7 はジミヘンのカヴァーが有名。ジミのカヴァー・ヴァージョンは凄いっすよ。聴いてない人はぜひ聴いてもらいたい。カッコ良すぎる!
上記のディラン30周年の時のステージでは、ニール・ヤングがカヴァーしてて、これも良かった。けど、ジミヘンのカヴァーのカッコよさにはかなわないかな、流石に。
もちのろんろん、ディランのオリジナルはグレートですよ、それは言うまでもない(ただカヴァーの世界ではジミヘンのそれはあまりに秀逸・壮絶・空前絶後のカッコよさなんだよ!)。
この歌も僕のサイトで何とか 訳してますが、訳してみた僕が分かり切れない難解な詩。原詩の英語の詩も詩として難解なんだろうけど、唸る感じの詩的世界なんですが、正直、これは難しいのです。
メロディはと言えば、3種類のコードの繋いでそれを延々と続けていくパターン。超シンプルなはずなんだけど、これが単調に聴こえない。聴いてる時はそんなシンプルなコード構成のことなんて、何にもアタマに浮かびません。
荒野に吹く風を思い起こさせるハーモニカ、アクセントのあるギター・ストローク、ドラムスがキープし、追い込んでいくテンポ、ディランの叫び、一つ一つの要素による、それぞれが動きながら構成していく、ドラマティックな『物語り』。完璧。
9 もいいなぁ。ザ・バンドの昔の解散コンサート、映画館でも観たし、ビデオも持ってるけど、そこでディランを迎えて他の参加ミュージシャン(ニール・ヤングとかジョニ・ミッチェルとか大勢ね)とともに感動的に(どうも「感動的に」と書いてしまうと陳腐な修飾句になりかねないけど、実際、感動するんだから!)に歌い上げられてるのが、この曲。
ディランのデビュー30周年の時は、プリテンダーズの女帝(笑)、クリッシー・ハインドがキメてた。いや、彼女のカヴァーも良かったなぁ。
この歌の歌詞(この詩)もいいんだな。これは訳すのも言い回しも難解というわけではないけれど、僕は時々、僕が希望を持ち続けるために、この詩に立ち帰る時があります。
11 は、クラプトンのカヴァーも有名だね。
15 はディランがキリスト教への信仰に向かった時代の曲。ディラン30周年の時は、BOOKER T. & THE MG'S がカヴァーしてました。
さて、上にも既にずいぶんディランの歌詞について書いたけど、ディランは歌詞も凄いんです。・・・って今さら指摘しなくてもホンマ凄いんだけど、詩と書いた方がよいですかね。
つまり、ディランの歌はもちろんメロディと歌詞とディランの歌と演奏があってのことだけど、彼の歌の歌詞は、メロディ無しの『詩』だけで完璧に世界を作ってるってこと。一つでも歌詞を知ってみれば分かる。いくつか知れば、その詩の表現力と深さと、時には難解さにも、唸ります。
僕はずっとディランは好きだったけど、それほど深入りしてこなかった。濃厚なディラン・ファンからすれば、ほんのサワリを知ってる程度だろう。でも、このベスト盤を聴いていても、それでディランの凄さは分かります。そういう人には本当に便利。
かなーり沢山ある名曲の中からおそらくかなり苦心し選曲されただろうディランの作品の一部を、こうやってあらためて聴いていると、あらためて(って感じだな、ホンマ)これから更にハマッテいく予感すら覚えますね。
ディランはまさしく稀有のアーティストだって、つくづく感じさせるパフォーマンスの数々。うーむ。
(2005年10月8日、記)
ベスト盤は沢山出ているディランだが、1997年に出たThe Best Of BOB DYLAN に続く、その volume 2 としてリリースされたもの(2000年)。
1 だけは当時、新曲として収録されたものらしいです。
2 は 1963年のセカンド・アルバム が初出。僕はこの曲も好きです。
3 は、1992年のディラン30周年のトリビュート・コンサートでは、今は亡きカントリーの大御所、ジョニー・キャッシュがカヴァーしてました。
6 は、30周年トリビュートの時にジョニー・ウィンターにカヴァーされたもの。ジョニー・ウィンターのスライドと激しいヴォーカルも強烈な印象を残しました。
7 は、30周年トリビュートの時はトム・ペティ&ザ・ハートブレーカーズがカヴァー。歌詞 は面白いよ。おそらく投石とラリることと、ダブル・ミーニングだね。ただし、僕にはなぜ「雨の日の女たち」なのか、なぜ“ #12 & 35 ”なのか、それが分からない。
ちなみに、14 も、30周年のトリビュートでトム・ペティたちにカヴァーされたもの。たしかトム・ペティ&ザ・ハートブレーカーズは、以前ディランと一緒にツアーしたりして、ディランに気に入られてんだよね。トム・ペティの歌い方そのものが、どこかディランの影響を感じるけど。ただ、ディランほどぶっ飛んだ歌い方じゃないけれど。ディランはサウンドがよりロックらしさを増した頃、ザ・バンドを従えていたんだけど、トム・ペティとツアーしたのはもっと後の時代。えーっと、いつ頃かな?
12 は、冤罪の元ボクサー救援のために作られた曲。ボクサーの名はハリケーン・カーター。1966年にニュージャージー州で起きた殺人事件で、黒人だというだけで犯人にデッチ上げられ、獄中に22年。この間に3回の再審があって、1988年にやっと法廷で無実が認められて解放された。
ディランは、1974年出版のハリケーンの自伝を読み、それに触発されてこの曲を書いたらしい(1975年)。歌詞は11番まで続きます。
ディランの曲やディランたちの活動もその元ボクサーの救援運動に貢献し、社会の注目を集め、裁判が続けられ、最後にその元ボクサーは冤罪が認められて裁判闘争に勝利して解放された。
18 は、日本盤だけのボーナス・トラックで、フォエヴァー・ヤングのデモ・テープ・ヴァージョン。デモ・テープと言っても、1974年の発表から11年後の1985年のアルバムに収録されたヴァージョンだか、その著作権登録のためのデモ・テープだかってことで、ちょっと出所は僕にはよく分かりません。ボーナス・トラックってのはボーナスって言えばボーナスなんだろうけど、発売された国によって違う曲が特典みたいに付いていて、でもコアなファンはそれだけの為に他の国のヴァージョンが欲しくなるようになってるんだよな。
アマゾンの本家アメリカ『アマゾン・コム』でチェックしたオーストラリア盤には、ボーナスが2曲付いていて、うち1曲は Blowin' In The Wind のライヴ・ヴァージョンでした。
ディランが、歌う度に自作曲のアレンジを変え、時には歌詞も変え、あるいは曲によっては歌詞の順番が変わり、ツアーでも毎日同じセットリストに忠実なんかでなく、何曲もの昨日と違う曲が演奏され、演奏の度にやはりアレンジが変わり、歌詞が・・・。これは有名な話ですが、僕はそれをディランが意識してやってるのか、あるいは自然体なのか、いやいや、ナチュラルでいるとそうなってしまうのか、どうにも分からない。
なんて書いて、僕が思っているのは、実際のところ、最後のナチュラルでいるとこうなる、というか、場合によっては、同じアレンジでやるなんて気はしない、いや、もしかしたら、同じアレンジや歌い方を繰り返すことができない(笑)、そういうことじゃないかなてってこと。
ディランは不世出の天才、鬼才、奇才、稀有の人です。真の「感性の天才」というところでしょうか。
二度と同じ演奏と歌い振りはしていまい、そう思うと、The Best Of BOB DYLAN(1枚目)と、この volume 2 の2枚、これはディランの長年のキャリアにおける「星の数ほどの」名曲から、代表曲の多くを(ほとんどがオリジナル・ヴァージョンで)収録してるわけで、そういう意味で相当に貴重なアイテムと言っていいわけです。
長い年月にわたってリリースされてきた名曲のオリジナル録音、それを沢山集めたアルバム、ディランのほとんどオリジナル録音からのコレクション、ディランなだけに、相当に必携、必聴アルバムとなるわけです。いや、実際、ええわ、2枚とも。
(2005年10月8日、記)