I AM SAM


(2001年 アメリカ映画)

監督 : Jessie Nelson
主演 : Sean Penn, Michelle Pfeiffer, Dakota Fanning
音楽 : John Powell

ずっと気になってた映画。公開後2年経ってから観ました。なんで気になっていたかっていうと、ショーン・ペンが好きだってこと(と言っても、映画でまともに全部観たのはシン・レッド・ラインだけかな、ショーン・ペンという人のキャラクターが好きです)。それと、ビートルズの曲をいろんなミュージシャンがカバーして歌ってるらしい。いろんなところで紹介されてたストーリーに惹かれる。信頼し尊敬する知人が薦めていた。で、いつか観ようと思っていたら、WOWOW で放映しました。ビデオに録画して、後でじっくり観ました(2003年7月20日)。

テレビ放映中もつい所々観てしまったけど、もういかにも感動してしまいそうだったな。ショーンがいいし、ビートルズの曲がいいし、ビートルズのメンバーに関する話も出てくる。まぁビートルズは道具だけどね。効果的に使われてます。
知的障害を持ちながら一人で愛娘ルーシー(もちろん、ルーシーはダイヤと一緒にお空にって、ビートルズの曲のタイトルから取った名前です)を育てようとする主人公サムが、児童福祉局から養育能力が無いと判断されて養育権を事実上奪われる。しかし腕利きの弁護士リタの力も得て、何とかルーシーとの生活を取り戻そうとする、そういうストーリーです。

配役が素晴らしい。知的障害者の仲間。やたらと映画に詳しい者もいたりする。それから、外出恐怖症だけど、ルーシーにピアノを教えていたアニーは、思い切って法廷に出て証言する。アニーも家族の問題を抱えていたりする。弁護士リタは、最初は知的障害があるうえに弁護料を払えるはずもないサムを相手にしなかったけれど、弁護士の仲間内のパーティーにまでサムに訪ねて来られて、はずみで無料で奉仕するんだと言ってしまう。そんなリタも夫や子供との不和の問題を抱えている。
ミシェル・ファイファーのリタは「はまり役」でした。やり手で凄腕らしい弁護士で、ストレス一杯で助手をアゴで使ってたりするが、本音のところでは「いい人」ではない自分を受け入れられない心の問題を抱えていたりする。自分は失ったことが無い、負け知らずな女、そう自分自身を評する、そんなリタが、最後には、サムに向かって「私の方があなたに救われている」と告白する。サムとルーシーの親子の関係を真中に置きながら、実は、サムとリタの関係の変化、その過程でリタが変わっていく、というか暖かい感情が引き出されていく、そこも同等もしくは同等以上に、この映画の重要な見どころだったりする。つまり、知的障害者の父と健常者である愛娘というシチュエイションだけに留まらない、やっぱり普遍的なものを、その環境の中に内包しているわけです。感動させる映画って、そういうのは多いかな。

ビートルズの曲は本当にうまく使われている。Two Of Us, Strawberry Fields Forever, Across The Universe, Blackbird, Here Comes The Sun, Lucy In The Sky With Diamonds, You've Got To Hide Your Love Away, Mother Nature's Son ...
ルーシーの愛らしさ、子役の演技の完璧さは具体的にコメントするまでもないくらいだったけど、ちょっと意地悪く言えば、上手過ぎるくらいだったな。設定として、かなり頭のいい子という役でもあったとは思うんだけど、その役の演技としても、ちょっと出来過ぎって感じがするくらいだった。
ショーン・ペンは見事。確か、アカデミーの主演男優ノミネートもされてたかな。結局オスカーは取らなかったような気がするけど。

舞台設定としては、ある意味クレイマー・クレイマーとか、あるいはレイン・マンとかにも通じるところがある映画かな。
人生で本当に大事なことは眼に見えるような物事ではない、うまく言葉に表したその言葉の字面でもない。「眼に見えるような物事」がないと生きるのは易しくないってのが辛いところだって時もあるけれど、だけど本当はもっと大事なことがあるってこと、そんな難しくて、でも易しくて暖かいことを感じさせてくれる映画でした。音楽はビートルズの曲が特筆されがちだけど、要所要所に出てくるアコースティック・ギターをフィーチャーした曲も心に沁みます。

(2003年7月21日、記)